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2018年9月 4日 (火)

水都国際 究極のオープンスクール 愛と希望の弁証法

★8月26日、水都国際のオープンスクールが行われ、教育界に衝撃が走った。その模様と衝撃の意味は、記事と動画のカップリングでみると、明快になる。まずは、両発信をご覧いただきたい。

★当日の模様については、この2つの表現がとてもわかりやすく、ここで説明する必要はないので、いくつか気づいたところを箇条書きでメモしておく。

1)オープンスクールはワークショップ型。記事と動画という2つのドキュメンテーションでオーディエンスに発信するのは、ワークショップ運営のセオリーで、それを広報にも「適用」するという一石二鳥。経済的だし、発信力もパワフル、なにより、「学びの質感」が伝わる。

一見広報の手法のように思われるかもしれないが、今までの広報では、ワークショップをやります/やりましたという事実を「伝える」ことはしていたが、「学びの質感」が「伝わる」発信はほとんどしてこなかった。この意味でも「衝撃」的。


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2)エントランスがすでにワークショップの導入になっている。そこには、オープンスクールのポスターがずらりと並べられていて看板に代用、つまり「適用」されている。

なんだ、ポスターの二次使用で経済的なんだろうと思われるかもしれない。たしかに一石二鳥だ。がしかし、ここにはメッセージが隠されている。隠されたメッセージのキーワード、つまり暗号は「アンディ・ウォーホル」。

エっ?なにそれッ!と思ったかたは、「アンディ・ウォーホル」で画像検索してみていただきたい。すぐにピンとくるはず。初期コンテンポラリーアートのフラクタル手法を象徴している。すなわち、入り口を通る瞬間に、ポスター群アートはそっと語り掛ける、「今日はアートシンキングだよ。頭を柔らかくして、楽しんでね」と。ここには、認知心理学の「アフォーダンス」という仕掛けが埋め込まれてもいる。

そんなこと生徒は理解しないだろうと言われるかもしれない。伝えることが目的ではないからこれいいのだ。心の深層に何らかの響きが「伝われ」ばよい。それに生徒の目覚めはどこで起こるかわからない。1人ひとり違う。入り口から会場、そして出口まで、せっかく与えらた空間、学びのトリガーを埋め込んでおき、どれかに生徒が気づいてもらえれば、それでよいのだという「愛」の配慮・ケアなのである。

つまり、Growth Mindsetが、入り口から始まっている。

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3)ワークショップは、トピックが2つ。1つはアヒルをレゴでつくる。もう1つは、「LOVE」と「HOPE」の彫刻か何かのオブジェの写真から新しいコスチュームをデザインするという「大学入試問題」=「思考力型入試問題」体験。2020年大学入試問題が変わるが、そのエッセンスを想定したオリジナル問題のようだ。


この2つのワークについては、記事や動画をみれば、その意味がわかるので、そちらをご覧いただくことにして、ここでは、3つの気づき(あくまで私の気づきに過ぎないが)をメモしておく。

・両方ともパンフレットや円状の紙ではあるが、そこがちゃんと学びのスペースになっている。たしかに、説明会を開けば1600人が訪れる高評判の学校だ。今回も80組対象で4回/日行ったぐらいだ。すると一般の授業体験のように25人くらい1クラスでやることはできない。そこで、創意工夫したのだろう。なんて経済的なとすぐ思われるかもしれない。違う。限られた空間だからこそ、クリエイティビティは生まれるというデザイン思考やアートシンキングが活用する手法が生かされている。

・しかし、何よりも「四角いスペース」から「丸いスペース」にシフトするという空間変容にこそ意味があるのだろう。それは何か?「入口」の意味を考えるのと同じ仕組みなので、しばし考え巡らしてはいかがだろうか。ワクワクしてくるはず(笑み)。

・それから、オブジェを一つ与えて、創造してご覧ではなく、2つのオブジェを用意しているのである。しかも「愛」と「希望」である。この愛と希望の弁証法は、何を生むのだろう。要素を混合する発想もよいだろうし、ケミストリーよろしく統合してもよい。混合の仕方も多様だろうし、化合物も多様だろう。水都国際は、「愛」と「希望」と「?」だよというメッセージがアフォーダンスされている。「?」の部分は何だろう?一つは先述した記事の中に明記されているので、読んでいただければと思う。もちろん、正解は1つではない。

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・生徒の制作物がタブレットで映し出され、生徒がプレゼンしているシーンがある。このシーンの意味は、たしかに80組だから、よく行われているワークショップのようにみんなの前にでて行うには、移動の時間がかかることや混みあっていて移動しづらいことなども考慮すれば、経済的であるが、ここにも学びのセオリーがある。しかも、これはかなり重要だというか、これがなければ学びではないとも言えるほどなのだ。

このシーン。20世紀型教育では、心ある教師はやっていたが、一般には行われていない。IBやAPや欧米の私立学校では、当たり前の学びのシーンであるが、世界中でも多くの学校では行われてこなかった。

欧米でも、21世紀型スキルベースの公立学校で、ようやく必ずこのシーンを授業や学びの中にいれられるようになったし、その重要性についてはかなり言及されている。

一方、現在、日本でもアクティブラーニングをやっている学校は増えたが、時間がないからと、このシーンをすっとばすところもある。残念なアクティブラーニング。。。

かくして、20世紀型教育と21世紀型教育の大きな違いは、このモニタリングシーンがあるかないかだ。21世紀型教育を標榜しても、ここをちゃんと説明する学校説明会はない。

この質感は、目立たない。よく単語は言われてもいるが、授業やワークショップ体験のときにその意味は問われないま間の場合が多い。ここにクリエイティビティが生まれる泉が瞬間広がる。つまり成長の瞬間だ。あまりに瞬間の永遠がゆえに、気づかない人が多い。

で、この瞬間シーンを何と呼ぶのかと尋ねられるかもしれない。それこそ考えてみてはいかがだろうか?エっ?と思われるかもしれないけれど、ちょっとやってみていただきたい。そして7分後いや30秒後で十分だが、いったい自分は何を考えていたのか振り返ってみると、そのとき意味が目の前に広がるだろう。

いやそれでも知りたいと思う方は、コルトハーへン教授の教師教育学の本を斜め読みすることをオススメする。コルトハーヘン教授自身、数学教師経験者だから、読みやすい。

★他にもイントロ教育などのセオリーがはいっていたりして、おもしろいワークショップ。参加80組に対して、IBや本物の21世紀型教育で行われている学びの理論と実践が、コンパクトにすべて折り込まれている。ジョブスの好きなピカソの「引き算の美学」がここにはある。

★宇宙船の構造を思い浮かべて欲しい。引き算の美学のコンセプトでなければ、飛ばせない。そこで多くの学者や技術者が、創造的才能を発揮し、知恵をひねり出したわけだ。軽量化と強度と高度テクノロジー。しかして、その発想は、「折り紙」だった。そのような創意工夫を生み出す過程と同じ準備プロセスが、今回のワークショップを創る時にもあったに違いない。

★「愛」と「希望」の学校。熊谷先生と太田先生のような「知と情熱」で満ちている教師がいる学校。水都国際は今後さらに注目されるコトだろう。

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