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2018年9月21日 (金)

洗足学園 今年も人気 その理由の向こうに見える時代のウネリ。

首都圏模試センターの9月の「統一合判」の「志望校別度数分布表」によると、2019年度入試において、洗足学園は大注目されていることがわかる。

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★すでに、2年前から同センターの発行する偏差値表では、洗足は、フェリスを追い抜いてしまった。それは、たしかに大きな人気の理由だろうが、大事なことは、その背景にある時代のウネリである。

【表1】

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★ 【表1】を見ればわかるように、志望者数自体は横ばいだし、平均偏差値も横ばいだ。しかし、第一志望者数の増加が凄まじい。

★2科目の第一志望者数の前年対比は130.4%、4科目は140.4%。つまり、洗足とフェリスを志望する4科目生の中で、フェリスから洗足にシフトが起きていることを示している。

★今後、中学入試市場は、「高偏差値群」と「偏差値無関係群」に分かれる。端的に塾歴社会と塾歴解放区という流れになっているわけだ。それを象徴するのが、思考力型入試と英語入試の増加である。

★「高偏差値群」の受験生数は減らないが、増えもしない。4科目入試中心だから、知識と論理ベースの才能児が入っていく。「偏差値無関係群」は、知識と論理ベースの才能児ももちろん大切にするが、創造的才能者も迎え入れる。レゴやプログラミングベースの塾、英語の塾という新しい塾が中学入試に参入してくる。よって、そこの部分は増える。

★そうはいっても、少子高齢化は加速度的に進行するし、2020年東京オリンピック・パラリンピックが終わったら、経済が収縮することはほぼ間違いないだろうから、中学受験市場は、2020年をピークに一瞬下降する。

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(データ提供、首都圏模試センター)

★このとき、サバイブできる私立中高一貫校はどこか?それは、多くの企業がそうなのと違わない。グローバル教育とSTEAM教育というリベラルアーツのイノベーションを柱にもっていることだ。


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(洗足学園の大学合格実績。海外大学にも持続的に進学者が存在する。)

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(卒業生数シェア)

 

★「高偏差値群」は、学校自体はイノベーションにはあまり触手を伸ばさない。生徒が勝手にやってしまう程度で十分だと思っている。しかし、グローバル教育に関しては、洗足学園のように力をいれるところがでてくる。そこが高偏差値群の中で、パイの奪い合いで勝利する。


★洗足学園は、2020年以降も、東大・京大の実績を伸ばすだろうし、海外大学の実績も伸ばしていくだろう。アイビーリーグだけでなかう、リベラルアーツ大学も射程に入れているから、海外大学準備教育の質も年々豊かになるだろう。「高偏差値群」の学校で、グローバル教育にも力を入れない、イノベーションにも力をいれないというところは、沈みゆく。

★一方「偏差値無関係群」は、グローバル教育もイノベーションも力を入れていく。おそらく、すべてがこの方向になるだろう。その過程で、統廃合はあり得るが。とにも、世界大学ランキングの大学は、その両者の学びは当然だから、この群の市場は世界に広がる。


★インターナショナルスクール並みの英語環境が整えば、海外に留学するだけではなく、海外から留学にきてくれる。しかも、イノベーションは、海外の生徒にとっても魅力的だ。

★授業スタイルも、グローバルでイノベーティブだと当然「対話」や「議論」も行われる。これがないと海外の生徒の魅力は半減する。つまりプロジェクト学習があることは必須となる。プロジェクト学習とは、私は何ものなのかを追究する学びでもあるから、自らを探究し、それが他者にどう役立つかを教育の目標と考えるなら、基本中の基本である。

★東大・京大はそれほど入らないけれど、ハーバードやケンブリッジなど多様な世界大学ランキング100位以内の大学には合格するという「偏差値無関係群」。すでにそうなっているのだが、この群を、低偏差値の学校が何かやっているよと揶揄する非民主的な人々もまだいる。しかし、時代のウネリは、人間の幸福を願う歴史の深層のニーズがそこを打ち砕いていくだろう。

★偏差値というのは、母集団のポジショニングに過ぎない。人気投票である。だから、このような流れは最終的には、洗足がまさにそうであったように、偏差値の下克上がおこる。上記の表を見れば、三田国際がはやくも偏差値60以上の圏内にはいっている。その象徴だ。

★一方で、偏差値も2科4科だけではない領域で出すことも起こっている。多次元偏差値に移行している。そこに着手しているのは、首都圏模試センターだ。
★2020年以降の中学入試市場の動きは、実はこれまでのように、一本の偏差値で成立していたときとは、根本的に変わる。洗足のように、量の激増は認められないが、第一志望者数の激増はあり得る。これを量から質への転換というのだろう。

★日本の教育は、生産者年齢人口の激減を目前に、質へ転換し、1人当たりのGDPを倍増する計画が必要になってくる。駒東出身のユーグレナ社長の出雲充氏のような人材が、「偏差値無関係群」でたくさん生まれるようになるのである。

★出雲氏のミドリムシの大量生産という画期的発想を、イノベーションによって違うアプローチで開発することが可能だ。これによって、産業革命以降の近代の影の部分の囚われ人が解放される。

★この囚われ人をたくさんつくったために、自然と社会と人間精神の好循環が阻害されていたのは20世紀までで、その阻害を先鋭化させてきたピークが20世紀型教育である。

★「21世紀型教育」は、この「囚われ人」を解放する松明なのである。ここに中学入試市場が気づけば、日本は再び国力を回復するだろう。もっとも、そのときには国家観そのものも転換しているだろうが。。。

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