広がる教育イノベーションデルタ地帯
★時同じくして、IB(国際バカロレア)を導入する学校も増えるわけであるが、中でも2014年に北軽井沢に創設されたインターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢(ISAK)は、UWC加盟校で、日本の公立学校が推進するIB校とはだいぶ違いがある。学内は多様性で満ちているのである。
★一方21世紀型教育を創る会は、2016年に「21世紀型教育機構」としてアクレディテーションを行い、世界標準の学校をいわゆる一条校の枠の中でアップデートすることにした。
★グローバル教育3.0の段階に進むべく、C1英語、PBL、ICT、哲学×STEAM教育としての現代化リベラルアーツに取り組むことにした。このハードルは高く、さらにアクレディテーションで認定スコアを調査する団体が入るので、機構に属さないで、21世紀型教育を標榜している学校が結果的に増えた。
★21世紀型教育機構加盟に挑戦するのは、東京の学校が多いが、埼玉の正智深谷高等学校や静岡聖光学院が加盟して、認定を取得している。今年もキャンディデート校(候補校)として名乗りを上げる学校も出てきている。
★いずれにしても、一握りの特別な生徒がIBで学ぶのに対して、多くの潜在的創造的才能者が羽ばたく21世紀型教育のデルタ地帯が東京・埼玉―静岡―軽井沢・佐久にできた。
★この教育イノベーションデルタ地帯(DEI:Delta for Education Innovation)は、同時に入試マーケットの変容とも呼応した。思考力をベースにした新しい入試や英語入試など新タイプ入試が増え、それに対応する塾や模擬試験市場が拡大している。
★この新タイプ入試は、2020年大学入試改革とも呼応しているから、真っ先に中学入試で広がったが、高校入試でも広がり、大学入試前夜が迫るや否や、大学も、早稲田大学を先頭に「思考力型入試」を展開することを宣言し始めた。
★ミレニアル世代の次に来るZ世代(現高校生)は、スマホ、タブレット、SNS、プログラミングなど当たり前のデジタルネイティブがゆえに、ICT産業もというかICT産業が中心に学校と協働し始め、文科省や自治体も巻き込んで、ICT学習市場を拡大している。
★また、ISAKのような多様性の環境が、このDEI内の21世紀型教育校でも広がり、グローバル教育3.0時代に突入した今日、英語の重要性がますます高まり、英語塾の市場も拡大している。この際、アプリが活用されるから、結局英語とICTと新しい学びの塾の市場が拡大している最中である。
★2020年東京オリンピック・パラリンピックも大きなきっかけとなり、教育イノベーションを土台とするクリエイティブシティの動きもソサイエティ5.0の政財界の動きと共振し、ウネリ始めている。2020年から専門職大学が20前後開設される予定で、それが都市の在り方をソフトパワーベースのクリエイティブな産業都市に転換する契機にもなっている。
★地方創生という上からの改革だけではなく、都市それ自体が新しい政治経済都市をデザインするには、ソフトパワーを創出する初等中等教育・高等教育の首尾一貫した連携がカギになる。
★これは、実は20世紀型教育も都市や国と連動しているという意味では、同じ構造だった。ただ、そこでは、ハードパワーを活用できる人材を育成するカリキュラムであった。21世紀型教育は、ハードパワーをコントロールするソフトパワーを育成する教育であるから、上からの改革のみならず、都市自体のイノベーションが喫緊の課題となっている。
★その意味で、このDEI(教育イノベーションデルタ地帯)では、自治体が積極的である。静岡市も静岡聖光学院とは協力的であるし、佐久や軽井沢も同様である。佐久は、2019年には、イエナプランスクールを設立する準備をしているし、2020年には、教育哲学ベースの軽井沢風越学園が創立されるべく準備をしている。
★東京でも、2019年には、武蔵野大学中学校が立ち上がるが、ここも海外大学進学が可能な新しい教育を実施する。FAGAとの太いコネクションを活用して、新しい教育を展開する。また、調布にドルトンプランの学校も創設される予定。聖ドミニコ学園が大転換する動きを示してもいる。
★埼玉も、IBベースの公立中高一貫校や外資系人コンサル手法の細田学園も誕生する。
★これらの学校は、標榜するかどうかは、別として、グローバル教育とSTEAM教育を行うという点では、21世紀型教育を実施する。生徒1人ひとりの才能を重視し、同時に社会貢献という視野を持てる人材を育成するというのは、20世紀型教育が育成してしまった経済合理的判断をベースとする個人主義的人間像とは、決定的に違う。
★9月2日(日)、静岡聖光学院では、このDEIがどのような使命を果たしていくのか、最前線最先端の教育情報と実践を共有するシンポジウムを開催する。時代の真のニーズを把握する機会となろう。
★このシンポジウムで、DEIを関西にまで拡大しようと活躍している石川一郎先生も、基調講演する。石川先生は、香里ヌヴェール学院学院長として、同学院を21世紀型教育機構加盟に挑戦。アサンプション国際と共に、21世紀型教育を推進し、DEIの頂点を静岡から関西に広げようとしている。
★しかしながら、名古屋エリアに21世紀型教育機構加盟校はまだなく、現状では、21世紀型教育機構の飛び地となっている。このへんをどう展開していくのか、そのビジョンも聞くことができるだろう。
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