【思考コード分析】 この夏、「置き換え」スキルを!
★説明的文章の問3と問9Aは、両方ともほぼ正答率が同じ30%台。しかし、【グラフ1】のように、偏差値レンジ別正答率曲線(R曲線:Reaction Rate Curve by Range)が違う。
★これは、思考コードがB2とB1の違いがでているともいえる。首都圏模試センターは「BREAK」という解答解説の冊子を発行しているが、そこには一問一答に「思考コード」と「思考スキル」が記されている。
問3 B2 「筋道」「比較」 <記述式>
問9A番 B1 「置換」「具体化」<書きぬき>
★となっているわけだ。B軸思考は、「応用・論理」だから、この2つの問いは、小6生の日常使う知識程度で、思考スキルを活用すれば、考えていけるよということ。そういう意味では、この領域で使う知識は自動化・日常化しているので、難しい知識はいらないよということ。知識を憶えているかどうかで差がつかないよと置き換えてもよい。
★だから、B軸思考が得意だけど、A軸思考という知識を憶えているかどうかを前提とする思考力は不得意という場合もある。というよりも、実はこれが一般的なんだということも、「思考コード分析」でわかってきている。
★さて、話題を上記2つの問いに戻そう。問3は、「Aという状況の中でBである」という筋道をたてて記述する問題。中学入試では「論述」と「記述」は分けていて、「記述」問題は、与えらた文章(課題文章)の中に手がかかりが書かれていて、そこを書き換えればできる問題。
★R曲線を見れば、偏差値レンジにかかわりなくできている生徒がいるという特徴がある。一方問9Aの方は、偏差値レンジによっては、できる生徒とできない生徒の差がはっきりしている。その差異はβあたりを起点として起こっている。
★つまり、偏差値レンジ60~65未満の生徒にとっては、同じレンジの生徒であるにもかかわらず、問3に比べて難しく感じていて、そのレンジβ以上の生徒にとっては、問3より易しく感じているという反応になっている。
★問3の方は、文章中に書いてあることを見つければ、なんとかなると思っている生徒が、レンジβ未満でも以上でも存在する。ところが、問9Aの方は、できるできないがはっきりしている。
★実は、これには理由がある。問9Aは、「作為」という言葉を見つけるだけだ。どんな文章でも「〇〇ではなく●●」という構造が随所にあるから、それを応用するだけの問題。
★比ゆ的な表現を「具体的」に説明している箇所を探す。その際に、同内容表現がいっぱいあるので、それを「置き換え」ていって、問いの条件にある言葉を見つけるだけ。おそらくこのような感覚で、レンジβ以上の生徒は、内容がわかっているかどうかに関係なく、応用=適用できてしまった。
★しかし、レンジβ以下の生徒は、「作為」という言葉がその生徒にとっては未知で、思考がそこから先に進まなかったのだろう。実際にチュータリングをやっていて、「作為」という言葉を見つけていながら、未知の言葉だったから、避けてしまったということがわかった。
★「作為」という言葉の意味はわからなくても、同内容表現を置き換えていくこと(文脈をたどるということ)ができるかどうかを問う問題だった。もっとも、その生徒はわかっているけれど、躊躇したというだけであって、能力の問題ではない。
★このような生徒が、得点だけで合否が決まるのは、やはりどこか違う。そういう意味では新タイプ入試はこのタイプの生徒を見出せるかもしれない。
★さて、もう一度【グラフ1】を見て欲しい。①の領域は、問3で、レンジβ以上の生徒で、問9Aはできたのに、問3ではできなかった生徒を示している。
★彼らは、記述の手がかりを、文章中から見出せなかったわけではない。見つけたのだが、条件の字数に合わせてシンプルに書くことができなかった。
★要約というまでの技術はいらない。たんに「削除」という作業でできるのだが、それがうまくいかなかったのであろう。あるいは、条件の筋道(思考スキルの論理的複合)に合わすことができなかったのかもしれない。
★「削除」スキルで情報を圧縮する。言葉を「置き換え」て情報を圧縮する。前者は「記述式」で、後者は「論述式」で多用する。残念ながら、中学入試の従来型の入試問題では、「論述式」はそれほど出題されないから、自分の言葉で「置き換える」ことが得意な生徒が、「削除」という技術的なスキルのトレーニングを意識的に行っていない場合、思考が止まってしまうというコトもある。柔軟性は、いつの世の中も大切であるというコトだろうが、それには、選択肢があることを意識化(メタ認知化)しておく必要がある。
★中学入試も高校入試も大学入試も、現代国語は、内容(コンテンツ)重視の学び方が主流で、スキルトレーニングをそれほどしないから、内容が体験値として、自分にあっているかどうかで、その文章に対するモチベーションが変わる。
★内容がどうあれ、構造的にどう読み、構造的にどう書くのかという意味でスキルトレーニングすれば、いいだけである。編集という技術というコト。
★いずれにしても、
★となっているわけだ。B軸思考は、「応用・論理」だから、この2つの問いは、小6生の日常使う知識程度で、思考スキルを活用すれば、考えていけるよということ。そういう意味では、この領域で使う知識は自動化・日常化しているので、難しい知識はいらないよということ。知識を憶えているかどうかで差がつかないよと置き換えてもよい。
★だから、B軸思考が得意だけど、A軸思考という知識を憶えているかどうかを前提とする思考力は不得意という場合もある。というよりも、実はこれが一般的なんだということも、「思考コード分析」でわかってきている。
★さて、話題を上記2つの問いに戻そう。問3は、「Aという状況の中でBである」という筋道をたてて記述する問題。中学入試では「論述」と「記述」は分けていて、「記述」問題は、与えらた文章(課題文章)の中に手がかかりが書かれていて、そこを書き換えればできる問題。
★R曲線を見れば、偏差値レンジにかかわりなくできている生徒がいるという特徴がある。一方問9Aの方は、偏差値レンジによっては、できる生徒とできない生徒の差がはっきりしている。その差異はβあたりを起点として起こっている。
★つまり、偏差値レンジ60~65未満の生徒にとっては、同じレンジの生徒であるにもかかわらず、問3に比べて難しく感じていて、そのレンジβ以上の生徒にとっては、問3より易しく感じているという反応になっている。
★問3の方は、文章中に書いてあることを見つければ、なんとかなると思っている生徒が、レンジβ未満でも以上でも存在する。ところが、問9Aの方は、できるできないがはっきりしている。
★実は、これには理由がある。問9Aは、「作為」という言葉を見つけるだけだ。どんな文章でも「〇〇ではなく●●」という構造が随所にあるから、それを応用するだけの問題。
★比ゆ的な表現を「具体的」に説明している箇所を探す。その際に、同内容表現がいっぱいあるので、それを「置き換え」ていって、問いの条件にある言葉を見つけるだけ。おそらくこのような感覚で、レンジβ以上の生徒は、内容がわかっているかどうかに関係なく、応用=適用できてしまった。
★しかし、レンジβ以下の生徒は、「作為」という言葉がその生徒にとっては未知で、思考がそこから先に進まなかったのだろう。実際にチュータリングをやっていて、「作為」という言葉を見つけていながら、未知の言葉だったから、避けてしまったということがわかった。
★「作為」という言葉の意味はわからなくても、同内容表現を置き換えていくこと(文脈をたどるということ)ができるかどうかを問う問題だった。もっとも、その生徒はわかっているけれど、躊躇したというだけであって、能力の問題ではない。
★このような生徒が、得点だけで合否が決まるのは、やはりどこか違う。そういう意味では新タイプ入試はこのタイプの生徒を見出せるかもしれない。
★さて、もう一度【グラフ1】を見て欲しい。①の領域は、問3で、レンジβ以上の生徒で、問9Aはできたのに、問3ではできなかった生徒を示している。
★彼らは、記述の手がかりを、文章中から見出せなかったわけではない。見つけたのだが、条件の字数に合わせてシンプルに書くことができなかった。
★要約というまでの技術はいらない。たんに「削除」という作業でできるのだが、それがうまくいかなかったのであろう。あるいは、条件の筋道(思考スキルの論理的複合)に合わすことができなかったのかもしれない。
★「削除」スキルで情報を圧縮する。言葉を「置き換え」て情報を圧縮する。前者は「記述式」で、後者は「論述式」で多用する。残念ながら、中学入試の従来型の入試問題では、「論述式」はそれほど出題されないから、自分の言葉で「置き換える」ことが得意な生徒が、「削除」という技術的なスキルのトレーニングを意識的に行っていない場合、思考が止まってしまうというコトもある。柔軟性は、いつの世の中も大切であるというコトだろうが、それには、選択肢があることを意識化(メタ認知化)しておく必要がある。
★中学入試も高校入試も大学入試も、現代国語は、内容(コンテンツ)重視の学び方が主流で、スキルトレーニングをそれほどしないから、内容が体験値として、自分にあっているかどうかで、その文章に対するモチベーションが変わる。
★内容がどうあれ、構造的にどう読み、構造的にどう書くのかという意味でスキルトレーニングすれば、いいだけである。編集という技術というコト。
★いずれにしても、
①文章中の同内容表現を意識して読み、同じ内容は「置き換え」ながら読み進めるようにするだけで、今回のような問いには対応できるようになる。同内容表現であるかどうかは、「てにをは」がサインになっている場合が多い。②「要約」するときは、「削除」の技術と「置き換え」のスキルを区別して両方取り組んでおくのも有効かもしれない。「削除」の技術というと、なんか受験テクニックではないかと批判がでそうだが、立派な編集技術の1つであるコトは確認しておきたい。③漢字を憶えようとするときに、同音異義語や同訓異字を先に練習したり、熟語を訓読みに置き換えるトレーニングもしながら憶えていくと、文章でも応用が利く可能性がある。
★なお、「置き換え」スキルを大切にすると、「比較」スキルによって「差異」を見つける力も同時にアップする。おそらく、「置換」と「比較」は、かなり親和性があるはずだ。
★さらに、「置換」「比較」の両スキルは、いろいろあるスキルの中で、どの教科でも頻繁に使う突破口を見つける時の思考スキルでもある。「比較」はわかりやすい。しかし、「置換」は、かなり意識しないと気づかない場合がある。そして、だからこそ、そこが問題で問われる箇所でもあるのだ。
★さらに、「置換」「比較」の両スキルは、いろいろあるスキルの中で、どの教科でも頻繁に使う突破口を見つける時の思考スキルでもある。「比較」はわかりやすい。しかし、「置換」は、かなり意識しないと気づかない場合がある。そして、だからこそ、そこが問題で問われる箇所でもあるのだ。
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