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2018年8月17日 (金)

GLICC代表鈴木裕之氏との対話を通しグローバル教育3.0のウネリ実感

★この時期、GLICC代表鈴木裕之氏と対話の中心は、帰国生の大学入試の指導や国内生のAO入試の指導のシステム構築の話。システムと言っても、ICTなどのマシーンシステムではない。システム思考の育成のためのシステム。

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★この対話の一端を先月ホンマノオトに書き込んだし、それをウケて、鈴木氏もGLICCサイトでコメント(「多様性と創造的思考ー帰国生指導を通して」)しているが、生徒の成長とともに、このシステムも成長するから、現時点でのシステムについて触れたい。

★たしかに、ICTなどのマシーンシステムではないけれど、もちろんICTは活用している。CANVASというプラットフォームを使っている。最近では、eポートフォリオとかでいろいろなプラットフォームが活用されているが、多様性の中で、学びの成長や思考の成長を生成していくには、CANVASは優れものだ。

★おそらく使っている学校はないだろう。1クラス15人くらいが最適だからということもあるだろうが、チュータリングを導入している学校は、活用するとおもしろいのでは。それはともかく、成長の生成とはどういうことかというと、リアルとサイバースペースの両方を活用することによって、リアルな多様な対話を通しての思考を、内蔵秩序化できるということ。

【図1】

Glicc
★今、鈴木氏と帰国生の大学入試のために、小論文のワークショップなど協働しているが、互いにそのリアルなスペースでの生徒の学びのフローチャートは共有している。鈴木氏が、メインで指導をし、私はときどきワークショップをやるわけだが、そのワークショップとは、鈴木氏の小論文指導で行われている学びのプロセスを可視化することである。

★ 【図1】にあるように、15人サイズのクラスで、小論文の課題を生徒1人ひとりが編集していくわけだが、そのプロセスは、まずは、課題を問い返し、どこに重要な問題があるのか探し、その問題解決のための仮説をたて、それを検証していく戦略を練るわけだ。


★その戦略に沿って、コンテンツを編集していくが、そのときに、どんな思考戦術(思考スキル)を活用していくか同時に考えていく。

★そして、できあがったコンテンツに対し、講師鈴木氏がコーチングやファシリテーションをしていく。

★ワークショップでは、戦略―コンテンツー戦術をポストイットやドコデモシートで可視化する。つまり、「戦略」「コンテンツ」「戦術」のそれぞれのセクション段階で、議論や対話をして、図やグラフに描いていくわけだ。

★鈴木氏の方では、それを個人の中で、いったん完結させる。その後で、議論をする。入試本番の時は、ワークショップのようなセクションごとに議論をしたり、ポストイットを活用することはできないから、鈴木氏と生徒の対話を一度可視化しておくことは、久しく協働していて、有効だと確信している。あくまで、そういう経験値でしかないと言われれば、それまでだが、講義やワークショップの合間に鈴木氏と対話し、実感を共有している。ハーバードこそまだ出ていないが、それ級の大学への実績はでているということもある。
★さて、ここ数年、さらにリアルスペースの学びの後、生徒たちは、プラットフォームCANVASに書き込んでくるわけだ。

★そこでは、私たちはチュータになるわけだが、生徒同士はピアレビューをするから、ピア・インストラクションを行うことになる。これは、オープンマインドやGrowth Mindsetにも役に立つ。クラス15人は、チームになってもいく。


【グラフ2】

Cancas

★かくして、【図2】のような思考システムができるわけだが、これを通して、リアルスペースで行ってきた15人の対話が、生徒1人ひとりの内面で自問自答という内蔵秩序と化する。

★多角的な自問自答というシミュレーションができるようになる。そして、その自問自答の自分の内蔵秩序化したシステム思考をさらに洞察して、改善していくわけであり、この「システム思考をしている自分」を「洞察する自分」がいるという自己の多重次元性が成長を生成することになっているのだと鈴木氏と確信しているわけである。

★それにしても、ここ最近実感しているのは、帰国生は帰国して国内大学を受験するだけではなく、海外大学にもアプリケーションを提出するケースが増えてきた。

★学びの背景も、Aレベル、IB、APなど多様。そんな彼らが、口コミで鈴木氏のもとにやってくるのは、議論や対話、プラットフォームを活用した学びができるからであると生徒自身が語っている。

★すなわち、GLICC流儀の小論文の学びでは、TOKやクリティカルシンキング、クリエイティブシンキングなど、自分たちが学んできた方法を生かせるというのである。

★生徒によっては、この時期ずっと日本にいるわけではない。それぞれ海外と日本を行ったり来たりである。そういういこともあって、CANVASやZOOMの活用が必要だったというコトもあろう。

★鈴木氏は、彼らのそのような環境に適合するように、リアル&サイバースペースのインタラクティブラーニングを編み出してきたということだろう。

★帰国生が大学に進むと、GLICCでチューターとして協力もしてくれる。そして、自分たちの仲間も連れてきてくれる。GLICCの環境は、リアル&サイバースペースの相乗効果そのものであり、大学生がチュータになって、第1回グローバルアドミッションセミナーを、オンライン上で開催するまでになっている。


★鈴木氏は、≪グローバル教育3.0≫がやってきているとその実感を語るが、≪グローバル教育3.0≫を引き寄せているのもまた鈴木氏である。

★それにしても、日々自然に海外の知の多様性と接している生活になってきた。学校に行ってもそうだし、GLICCに行ってもそうだし、アーティスト仲間と会っていてもそうだし、≪グローバル教育3.0≫の到来は本格化するということだろう。

★それにしても、鈴木氏のように英語のできない私は、中学英語とグーグル翻訳とキーワードでなんとか切り抜け、洋書はキンドルで(わからない英単語はすぐに検索できる)、なんとか凌いでいるが、C1英語ができなければ、とてもでないけれど、多様性の中で議論ができないと痛感している。

★ただ、助かっているのは、多言語の環境も増え、その中にあって、互いにその場で第3の言語を見い出しながら、対話をしなければならないくらい、英語だけではない時代になってきているということも一方で確かなのである。

★英語のみならず多言語に対する言語能力のセンスと高次思考力とプログラミング思考が重要な≪グローバル教育3.0≫を実感しない日はない昨今である。

★さて、このような能力を有しているのが鈴木氏なのだが、9月2日、静岡聖光学院で開催される「第2回21世紀型教育機構静岡シンポジウム」で、パネルディスカッションのコーディネーターを務める。

★テーマは、「2020年大学入試問題を乗り越える思考力」。スタディエクステンションを経営もしている鈴木氏ならではの「挑発する知の対話」をしかけることは間違いない。パネリストは、静岡聖光学院 数学科主任 植田克彦先生、聖学院 21教育企画部長 児浦良裕先生、聖学院 数学科主任 本橋真紀子先生である。

★数学的思考力をベースにしたこれからの思考力のデザインの第一人者ばかりである。鈴木氏とどんなインタフェースを交わすのだろう。大いに期待したい。

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