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2018年8月27日 (月)

【21世紀型教育機構シンポジウム】 河野勝教授の思考方法は21世紀型学び。

以前、本ブログで「8月3日、早稲田大学入試センターは、予告通り、政治経済学部の独自入試「サンプル問題」を公開した。 」について紹介した。

★ただ、その時、出題された素材文についてコメントしなかった。日本語の素材文がちょっといい意味で気になったので、紹介したい。

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★それは河野勝氏(早稲田大学政治経済学部教授)の著書「政治を科学することは可能か(中央公論社2018/4/9)」である。

★氏は、フジテレビや新聞・雑誌などでコメントしている人気教授のようである。たしかに、スタンスがわかりやすい。というのは、専門家向けの論文と一般読者向けの書籍とはきっちり分けて編集しているからだ。

★そういう意味で、本書は、21世紀型教育校のみならず、今までの進学校、公立中高一貫校が大切にしている新書の読書のレベルに入れられるだろう。ハードカーバーで単行本なので、中高生が手に取るのは躊躇されるかもしれないが、おススメしたい本の一冊である。

★内容的には、民主主義を科学的に思考するものであり、どのテーマでも、調査と思考実験を繰り返している編集のし方である。

★政治経済学部としては、思考力型入試のサンプルにはもってこいだし、同大学の教授の本からサンプル問題を作るので、著作権の問題もクリアしやすかったのだろう。

★ただ、このような河野勝氏の思考背景には、上智大学→イエール大学→スタンフォード大学という研究の履歴が影響していると思われる。21世紀型教育機構の加盟校のように、思考力を重視するPBL型授業を実施している学校では、河野氏の思考のプロセスが大いに参考になる。

★私も、東大や一橋、ケンブリッジ大学に進んだ帰国生と行った小論文ワークショップでジレンマ問題をやるのはルーチンであるが、そのとき囚人のジレンマの構造に権力と正義の問題をつなげていくと、かなりプラグマティックな思考プロセスが共有できる。

★このようなワークショップは、おそらくIBやAP、ファンウンデーションでは当たり前のスタイルだというのは、帰国生が自分たちの体験と照らし合わせて教えてくれる。こちらも、帰国生から授業スタイルというより、どのような思考プロセスを生み出す学びを行ってきたか、聞きながらそれを取り入れていくということもしている。

★このワークショップのデザインの進化は、21世紀型教育機構の加盟校の先生方とも共有している。先生方も、いろいろなグローバルな外部研修で、ワークショップを体験しているから、その知見もシェアしてPBL型授業は日々進化していく。


★リサーチと思考実験、そして問題解決の手法は、解決案の背景にある思考の理念型を議論して炙り出すこと。そこまでくれば互いの理念型の比較衡量をしながら、最適の新しい理念型を生み出せる。その理念型を生み出す問題解決を当面の提案として打ち出せるわけだが、プロトタイプ――リファインは続けていく。このような思考プロセスが生成できる学びは、一方通行型の講義形式では、無理であることはもはや説明を要しないだろう。

★そして、この思考実験には、かなり科学的思考や数学的思考がかかわっていると推察することは容易だろう。

★今回の9月2日のシンポジウムでは、思考力セミナーの体験とそれをパネルディスカッションで解題していくのだが、そこに数学的思考が日常の生活(政治経済とは実は日常生活そのものである。専門家の仕事だ市民には関係ないと思っているのはフェイク思考である)に深くかかわっていることを実感することになるだろう。

★河野勝氏のプロフィールを見ればわかる通り、このような思考実験をし、問題解決を幾つかも考え、その理念型を見出すには、どうしても多様性の中で多くの異なる感じ方考え方と議論する環境が必要である。

★グローバル教育と思考力の育成はコインの表裏の関係に似ている。


★それに、東大法学部の推薦入試で行われるディスカッション方式は、21世紀型教育機構のPBL型授業的発想と共通するところがある。河野勝氏も東大推薦入試・帰国生入試(一般入試ではなく)も21世紀型教育機構スタイルも、互いに何のつながりもないが、世界標準の思考様式を求める限りどこか重なるところがあるのだろう。

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