【思考コード分析12】 世界制作のための数学的思考力と思考スキル
★ただし、この「思考スキル」は絶対的なものはない。というのも、出発点がそれぞれ違うからだ。たとえば、首都圏模試センターは、模擬試験・解答解説の作成、評価分析の「世界」から出発しているから、そこを合理的に説明し、作成できる「思考スキル」になる。
★あらかじめスキルはあるのではなく、この世界を分析するときにスキル化するし、リフレクションしながら世界をヴァージョンアップしていくときに「思考スキル」は再構築される。
★模擬試験・解答解説の作成、評価分析の「世界」づくりと「思考コード」「思考スキル」分析は表裏一体である。だから、同センターの教務陣は、毎回模擬試験が終わるたびに、リフレクションし、上記写真にあるように、整理したり、再構築を続けるのである。
★私も、リサーチフェローとして参加するが、その役割は、あくまでファシリテーター。模擬試験は、毎回1万人以上の生徒が挑戦するし、知という意味では、中学入試の領域だけではなく、世界とつながっているから、それが世界標準であるかどうか確認し合えるようファシリテートするわけである。
★もちろん、私は私で、自分の経験を通して、また今もワークショップをやりながら、自身の「思考スキル」をブラッシュアップしたり、やはり思考力やスキルなどを可視化している方々の本を読んで、すり合わせをしつつ、ブラッシュアップしている。
★たとえば、永野裕之氏の「伝説の入試良問」という本は、数学的思考力を基本にして執筆されている。問題の解法を説くというより、良問だからこそなのだろうが、問題を通して数学的思考力を学べるようになっている。
★大学入試問題だけではなく、小学生から社会人まで、直面する問題を網羅している。だから、算数であっても数学的思考力の視点で紐解かれている。私の思考スキルと比較するとこんな感じになる。
★一致するところもあるし、ズレるところも当然ある。数学では、原因と結果という考え方はしない。すべては置換操作になるからだろう。それに、矛盾・逆説は、そのままにしておかない。私の思考スキルは、レトリックのスキルもはいっているから、数学的思考力からみると、無駄なところかもしれない。
★実際、長いリベララルアーツの中で、論理とレトリックはしばしば衝突してきた。プラトンはレトリックはあまり好きではなかったが、アリストテレスはレトリックの研究を重視した。最近の現代文の大学入試問題で、文学的文章の出題が減ってきているのも、根っこは同じ問題があるのかもしれない。

★私自身は、若手哲学者で世界的に有名なカンタン・メイヤスーの「祖先以前性」という考え方に共鳴しているが、メイヤスーは、祖先以前を不問に付すのではなく、その存在を知ることは数学的思考力によって可能になるという方向性を論じ、それを証明している段階だから、その数学的思考力がいかなるものかは、まだわからない。とにかく、カントを乗り越えようとして乗り越えられなかった現代思想家らをさらに超えようとしているのである。
★ただ、AIだとかプログラミングだとかも数学的思考力は全面的に問われている時代が到来している。どうやら、数的事象であれ、自然現象であれ、社会現象であれ、表象世界であれ、それを理解したり再構築する「制作方法」「思考スキル」などは、数学的思考力と親和性があるというよりも、数学的思考力そのものでなければならないのかもしれない。
★そのことに私たちが抵抗しがち(数学以外の教科は、それぞれ独自の思考力があるとし、数学的思考力は数学独自のもので他教科にはないとしてしまう)なのは、それらの事象や現象をひとつの世界としてみなせない科目主義という、デヴィット・ボームだったら、首尾一貫性のない思考に固執しているのかもしれない。
★9月2日(日)、静岡聖光学院で「思考力セミナー」が行われるが、静岡聖光学院の植田先生、聖学院の児浦先生、本橋先生がコラボして作成・運営する。3人とも数学の教師で、数学的思考力を身近なものや科学に応用していく体験をする。
★3人の先生は、現代哲学の真理に到達している可能性大である。
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