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2018年8月10日 (金)

【思考コード分析06】 公教育と民間教育の協働の多様な仕方

Shoeisha Technology Media2018/04/05 14:00で、重要な論考がアップされている。中村 一彰氏(株式会社ヴィリング 代表取締役)の論考≪STEM教育を実践してわかった、「公教育」と「民間教育」それぞれの役割≫である。 ご自身が、小学校の理科の教員を経験し、かつ民間側からSTEM教育を提供、提案している。その際、公教育におけるSTEM教育の可能性や民間教育のかかわり方について、明快な考え方を示している。

★もちろん、中村氏の考え方が最適かどうかは今後も議論がされていくことだと思う。よいかわるいかではなく、公教育と民間教育のコラボレーションの在り方を真剣に論じているという点で、協働が大事だと念仏を唱えている段階を抜けている。こういう議論が子どもたちにとっても大切なのだ。

【図1】
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★中村氏は、まずは自身の立ち位置を明らかにしている。
私が運営するSTEM教育サービス「STEMON(ステモン)」のコンセプトは「『社会で戦う戦闘力』と『人としての豊かさ』をバランスよく育む」です。


 「戦闘力」という言葉からは少し過激な印象を受けるかもしれませんが、「社会で活躍する力」と言い換えることもできます。資本主義社会では相対的に良いものをつくる競争が多く、その競争に勝つためには力を発揮して活躍する強さが求められます。


 一方で、経済的に活躍しても幸せを感じにくい状態もあることから、自然の営みに感謝の気持ちを持つことや、家族や地域、趣味でオープンなコミュニケーションができるコミュニティに所属するなど、人としての豊かさを感じることも大切だと考えています。

★「資本主義社会」という言葉を明快に出すあたりは、いわゆる教育関係者とは違う感性をもっているなあと。それに、大企業の教育関連の会社員だと、ここはあえて触れない。資本主義の矛盾を生成しているという立場を語らないようにしている。ここが日本の教育の背景にある隠れた権力大国であるゆえんで、大企業に属して語るメンバーのお話は、クリティカルに聞かねばならない。多くの教員がそこに加担し、何も不自然さを感じないでいるのも否めない事実でもある。実は、そここそが子供たちの不幸を生み出している根源だということに目を背けていることに気づいていて、気づいていないフリをしているのかもしれない。

★もちろん、私も資本主義を拒絶なんてしていない。資本主義とのジレンマを解決することが本来はSGDsの本来的なミッションだと思っている。今いろいろな学校で行われているSGDsのプログラムは、そこにマスクをかけてしまう試みであるケースもいっぱいあるのは残念であるが、やがてはそこに気づくためにはこれも必然なのかもしれない。

★いずれにしても、私自身は、新しい資本主義を生み出すのがSTEAM教育の戦略だとさえ思っている。もし、20世紀型強欲資本主義について、論じることなく、子供たちを、そのままそこに出すような教育を続けていくのならば、それは、フィクションである。フェイクだろう。

★中村氏がそこまで思っているかどうかは、わからないが、少なくとも資本主義の最適化をしよという意志は伝わってくる。そして、それがSTEAMではなく、STEM教育という選択肢をとらせている理由なのではないかと思う。


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★そして、すごく戦略的なのは、そんな批判を教師に向けずに、そんな世界を今すぐ変えられないのだから、そのパラドクスの嵐を生き抜いていく「戦闘力」を子供たちに伝授しようというのである。

★先生方は、カリキュラムをこなさなければならないし、テストの採点をしなければならないし、忙しいから、できるだけ、効率の良い知識の体系を記憶する領域だけに集中してください。あとは、民間教育がその周縁であるSTEM教育をやりますと。今は周縁なんだけど、いずれそれがコアになるというルビンの壺のトリックを使っている。

★ともあれ、そういう役割分担をしましょうと提案しているのだ。しかし、それは、思考コードに重ねると【図1】のようにA1A2B1B2という最適化領域で、そのフレームを超えて脱最適化領域のプログラムをサポートするわけではない。

★私立中高一貫校では、大学受験や知識の記憶整理については、予備校やアプリケーションと協働して、行い、クリエイティブな領域は教師がやるというところもある。民間教育とのコラボレーションによってカバーする領域が違うというケースもある。

★私は、今こそ教師の質の時代で、STEM教育やSTEAM教育こそ教師ができたほうがよいと思っているし、私の周りの先生方はそう確信して教育を実行している。もちろん、その部分でも協働はするが、丸投げはしない。プロデュースするところは手放さないでいる。

★いずれにしても、現状の教育では、最適化領域を最適化することは難しい。民間教育でSTEM教育をサポートするというか役割分担として担うしかないのかもしれない。

★STEAM教育ができる教師がいる学校は、そういう意味では、魅力的な学校に映るのだろう。


★いずれにしても、2030年には、高度イノベーション人材が60万人前後不足すると言われている。放置しておけば、成熟社会日本から貧困社会日本になるだろう。この危機意識があるから、STEM教育で最適化思考を身につけ、STEAM教育で、イノベーション思考を生み出すという流れが、今できつつあるのだろう。

★起死回生という大変化をパッシブではなく、アクティブに生み出そうとする一つのケースが中村氏の挑戦であることは間違いない。公教育と民間教育の協働の在り方は多様であるが、そのことが議論されるようになることが重要である。もちろん、正解はない。しかし、妥当性から信頼性、信頼性から正当性へと議論の裏付けは深めていく必要は、倫理的には大事である。

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