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2018年8月 5日 (日)

【思考コード分析02】 算数1教科入試がトレンドになるワケ

★前回「【思考コード分析】 この夏、「置き換え」スキルを!」を書いたあと、さらに分析を続けていると、やはりいろいろなコトがみえてくるので、「思考コード分析」はシリーズにできると直感。どこかで、まとめるつもりだけれど、まずは、気づいたところから任意に書いていきたい。

★さて、2018年7月実施の統一合判の国語と算数の「思考コード別R曲線(Reaction Rate Curve by Range/偏差値レンジ別正答率曲線)を出して、比較してみた。

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★多様な気づきがあるが、国語と算数の大きな違いは、Cゾーン(Creative Zone)の問いがあるかないかである。

★国語という教科にCゾーンがないわけでは、もちろんない。どこの模擬試験でもそうだが、2科4科という枠組みで出題するとこうなる。

★国語でCゾーンの問いを出すとすると、詩や物語の創作問題を出題するか、少なくとも200字以上の論述式の問題を出題するしかない。出題しようと思えば出題できるが、2科4科での採点システムだとコスト的に対応できない。10,000を超える解答を採点するには、採点者の育成が重要だが、その費用は膨大になる。

★その点、算数は出題しても、採点はなんら問題ない。

★この状況は、学校においても同じである。だから、2科4科と新タイプ入試という多様な入試で対応することにしているのだ。

★2科4科だと、Cゾーンの得意な生徒を見出すことができないからだ。もちろん、麻布や武蔵のように、その枠組みの中でもCゾーンの問題を出題することはできる。しかし、採点には時間がかかるから、即日発表はできないのである。

★また、偏差値50~55の生徒は、Cゾーンの問題をはじめからトレーニングしなくても合格最低点をとれるように、トレーンぐされるから、せっかく出題しても解いてもらえない。

★この受験勉強とCゾーンのトレーニングのギャップを埋め、多様な才能者との出会いのチャンスを設けるには、新タイプ入試が有効であることが、「思考コード分析」によって明快にわかるのである。

★そして、最近トレンドの算数1教科入試について、AI社会対応やプログラミング思考の高いニーズの準備として三田国際のようにCゾーンの問題を出題することを明言しているところもあるが、これは、同校自身が、思考コードを制作して活用しているからコンセプトメイクができるのである。

★ところが、思考コードやメタルーブリックを作成していない学校が算数1教科入試をやると、2科4科の枠内の算数と同じ問題を出して、たんに算数が得意な生徒をとりますよというメッセージしか流せない学校もある。

★Cゾーンの問題を出していれば、算数が得意な生徒は、A軸問題では差がつかないから、結果的に数学的思考の潜在的可能性が豊かな生徒がはいってくることになるのではあるが。

★要するに、算数1教科入試というのは、きちんとしたコンセプトがあろうがなかろうが、うまくいってしまうという利便性がある。

★よって、コンセプトをはっきりさせないで算数1教科入試を実施する学校は、利便性効率性を優先する功利主義的な文化が広がっているというコトが容易に想像できる。

★一方、思考力入試、適性検査型入試などの新タイプ入試は、どこの学校もコンセプトをはっきりさせている。思考コードがなくても、2科4科型では、200字以上の論述試験は出せないことは体験値としてはっきりしているからである。

★いずれにしても、学校の教師の質は、入試問題によってはっきりわかってしまうのが「思考コード分析」である。
★入試問題は学校の顔であるが、教師の頭脳の反映である。公立中高一貫校のように、共通問題を作成できるのは、公立学校は、教師に拠って標準化ができないのを避けるという教育行政政策上の問題で、やむを得ない。

★しかし、私学の場合、外部作成者に委託することはまずない。それぞれの私学の特徴をもっとも表現しているのは入試問題であるからである。

★問題とは、問いのシステムであり、学びのシステムである。それは授業のシステムとも重なるのである。

★こうして考えていくと、JGの問題が、Cゾーンの問題を出題しない、あっさりした問題であることの謎が解ける。女子学院がどのように説明するかわからないが、JGに合格する生徒は、この入試問題では差がつかないのである。

★じゃあどうするのか?面接である。面接は、確かに合否に直接関係がないのだが、入試問題で差がつかない場合、面接以外の何で選抜決定をするのだろうか。JGの入試は、入試問題と面接はセットで考える必要がある。

★そういう意味で、ペーパー試験型入試問題として多様な才能者を受け入れる最高のモデルは、いまだに麻布の入試問題をおいて他にない。武蔵は、国語と社会では差がつかないので、結局、算数と理科の得意な生徒が入る確率が高い。そういう意味では、他校に比べて多様性を重視しているものの、麻布に比べて限定的である。

★開成は、すでに比較しようがない優秀な生徒が受験する流れになっているから、何をやっても多様性が失われている。それで、砂に水をまくような抵抗ではあるが、ときどきイレギュラーな国語の問題を出題する。この傾向は今始まったことではなく、30年以上前からの伝統である。

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