2023年6月 1日 (木)

変わる高大連携(01)八雲学園のイエール大学との成長する連携①

★八雲学園の年に一度のイエール大学との高大連携。同大学の<Whim’sRhythm>(アカペラの音楽チーム)と音楽交流をする連携ですが、もう10年続いています。この連携のかけがえないの価値ははかりしれません。何せ、日本では八雲学園とのみ行われている交流です。その交流が、コロナ明けに3年ぶりに再会しました。2日間の交流で、1日目は八雲学園で9つのプログラムが実施されます。八雲生とワークショップやパフォーマンスを行うのです。もちろん英語でです。当日は、中3と高2の学年が中心ですが、八雲生は6年間の生活の中で、全員が2度このプログラムを体験することになります。2日目は、パーシモンホールでコンサート。コラボして演奏する曲目もあります。この日は八雲生全員が会場に入場します。

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(ミュージカルクラブ<glee>と明日のコラボの音合わせ)

★八雲学園のこの高大連携は、他とはかなり違いがあります。異色の高大連携です。大学の先生が講義にくるわけでもないし、探究活動を共にするわけでもないのです。しかしながら、生徒はイエール大学の学生と交流することによって、インスパイアーされ、さまざまなキャリアデザインを自分で切り開いていきます。

★ミュージカルクラブ<glee>もその一つです。10年前にイエール大学と出会った先輩たちが、私たちもミュージカルをやりたいと立ち上げたサークルがあっという間にクラブに昇格したのです。かなり本格的ですが、それも一年に一度、そのときにイエール大学とコラボレーションできる腕を磨き上げるための活動をするのが伝統になっているのです。

★音楽をコラボして作っていくには、英語も必要です。歌詞の意味について語り合ったり、ハーモニーについて語り合ったり。

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★まず、イエール大学の学生と出会ったときに、ウェルカムミュージックとして、自分たちの歌を披露します。ミュージカルですからダンスもあるし、セリフもあります。すてきです。イエール大学の学生も大いに盛り上がります。

★そして、明日共に歌う作品を歌います。その響きは互いに感動を生むものです。明日はこれでいけるねと。

★しかし、各パートに分かれて詰めてみましょうとミーティングというか音合わせ。

★もう一度歌います。なんとこれぞビフォー・アフターの妙技ですね。さらにすばらしい歌声が響きました。わずかな時間に作品が完成する。これはgleeのメンバーが日々練習を積み上げてきているからできることです。

★最後に<Whim’sRhythm>から贈るアカペラコーラス。静かな音楽の中に燃えるような情熱の響きが、この高大連携の核心を共有することになりました。

★このプログラムはわずか30分です。次のプロラムは、軽音楽部とのセッションです。別れを惜しみながら、イエール大学の学生は次のプログラムに移動しました。もちろん、そこでもすばらしいケミストリーが起こるのです。

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2023年5月30日 (火)

変わる私立中高(35)越境知を体験する中高生④和洋九段女子の農村体験 地域と成城大学のトリニティ連携

★5月は、和洋九段女子は各学年多様な場所で越境知を体験する研修旅行が目白押し。その中で高1は、長野県の飯綱町・芋井地区で農村体験をします。民泊をしながら、地域の方々と体験を共にし対話を深めていきます。毎年、和洋九段女子の高1生は、地方創生の企画提案を練り上げ、文化祭で発表しています。そして、2日目は、成城大学の経済学部の境新一教授と連携します。生徒の構想をシェアリングする時間で、教授がフィードバックするようです。生徒たちが、マーケティングなどの経営的な視点についても織り込んでプレゼンするからでしょう。

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(農村体験2日目のプレゼンシーン:写真は同校サイトから)

★さらに、境教授は、ご自身が主宰する境ゼミのゼミ長も同行させていて、学生から見たフィードバックの機会も設定しています。今年は驚いたことに21世紀型教育一期生の仲野さんが同行しました。

★仲野さんは、私の知人でもあり、何か21世紀型教育校和洋九段女子と響き合うものを感じました。

★ゼミ終了後、仲野さんからは「不可能かもしれないと躊躇せず、チャレンジし、自由に発想していく高校生に刺激を受けました」とコメントをもらいました。

★仲野さんは男性ですから、和洋九段女子の同窓生ではないのですが、21世紀型教育の同士校のOBです。学校を越境してつながりが広がっている教育の見えない輪に希望を感じないではいられません。

★そして、このような広がりがでてきたのは、言うまでもなく、コネクテッドスクールとして和洋九段女子が、学校と地域と大学のトリニティコラボレーションをどんどん拡張し増やしているからです。

★Think globally, Act locally.という和洋九段女子の先生方の精神の真骨頂です。

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2023年5月29日 (月)

変わる私立中高(34)越境知を体験する中高生③順天「社会貢献のためのアントレプレナー」

★先日21世紀型教育機構の定例総会で、加盟校の順天学園の副校長片倉先生が、こう語られました。

「21世紀型教育的なところで特徴的なことは、探究活動が順天が最も強く打ち出している部分です。全校生徒が様々な活動において関わっています。今年の2月には香港の学校が訪問してくれて理数教育をめぐる合同発表会を開催しました。岡山や大阪の学校も訪れてくれるなど、そういう面では幸せな学校だと思っています。最近のイベントとしては、起業家的な探究活動の場として「探究コンテスト」にも参加しました。ただし、順天の場合、ボランティア教育にも力を入れているので、「社会貢献のためのアントレプレナー」を目指していくことを考えているのです。その意味で、社会や世界に貢献できる人材の輩出がこれまでもこれからもテーマとなっていきます。」

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(2019年のグローバルウィーク。私もなぜか講師に。世界を創るワークショップでしたが、洞察力と感受性の豊かな生徒の皆さんとの対話は鮮明に記憶に残っています。)

★順天の生徒は、片倉先生の語るように、海外の学校や海外のシティの方々と社会解題を共有し、未来を洞察し、未来創りの輪を広げています。それは高大連携においても、企業やNPOなどの外部団体とのコラボレーションにおいても同様です。

★STEAM教育が世の中で注目される前から、サイエンス・マスの探究的な深い授業が展開していました。当然ICTは必須になります。それに活動がThink globally, Act locallyの発想で行っていますから、グローバル教育も破格です。

★ですから、自分の殻を破っていく体験は、グローバルな広い範囲に及でいます。SGH認定校に一早くなったということも、その教育の量と質を拡大するのに役立ったでしょう。

★そのSGHの一環として、大学の先生を中心に、NPOや企業など多くの団体とコラボして、グローバルウィークという講座が開講されています。2019年に私も「世界の作り方」という講座を担当しました。

★どんな世界を創りたいのか、あるいは協働して創っていきたいのかが氷山モデルの見える部分のテーマだったのですが、もう一つのテーマはそのワークショップを通して、自分の内面にある世界を創る視点を可視化していくというものでした。

★越境知というのは、異なる人々と対話をするときに生まれてくるだけではなく、自分の内面を見つめ、ふだん気づかない自分のものの見方や感じ方、考え方を掘り起こす没入プロセスの際にも生成されます。

★その体験が順天のみなさんと経験できた90分は、今の私に学びや対話を考える貴重なプロトタイプになっています。

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2023年5月28日 (日)

変わる私立中高(33)越境知を体験する中高生②パウロの生徒たち

★先日、聖パウロ学園の理事会がありました。新校長の小島綾子先生を迎えての理事会。パウロの歴史始まって以来初の女性校長です。今年はパウロは開校75周年です。この節目に女性校長誕生はとても意味があります。世界が希求しているすべての生徒にエンパワーメントをという力が溢れだすからです。実際、4月、5月という2カ月で、今までにない生徒主体の教育活動があふれ出しているのです。

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★生徒が主体的に考えて行動するというのは、ただ積極的にことをなすことを言うのではありません。世界への興味と関心を抱き、それがゆえに世界の痛みにも気づき、自分では何ができるのか、小さな動きでもいいから考えて判断して世界貢献に動き出すというチェンジ―メーカーとして「考動」するということです。

★生徒会選挙、体育祭、文化祭、部活などの教育活動など生徒が企画運営してしまいます。学年を越境して活動していきます。あらゆる行事はアート活動も行われます。そして、探究ゼミや哲学対話という横断的な思考様式をトレーニングし、ボランティアや森の教室プロジェクトなど外部の団体と連携しエンパワーメントやエージェンシーのコンピテンシーやテクノロジーを実装していきます。

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★探究ゼミと哲学対話は、その思考のエンジンとしてトゥルーミンモデルやアブダクションなどの正解のない問いを自ら見出し、洞察していくクリエイティブティや批判的思考が発動する仕掛けがしっかりなされています。各教科の授業でも20%ルールがあって、そのような思考の時間を設定しているのです。あらゆる教育活動が有機的に結合する仕掛けが緻密に計算されています。

★あらゆる活動で生徒が主体的になれるのは、そのような思考型教育が氷山モデルでいう水面下に見えない学力としてあるからですが、何よりメンタルモデルが効果的利他主義=黄金律を根っこにもっているということです。

★もちろん、このメンタルモデルは、自分の殻を破って越境していく勇気と自信を3年間でもっていくことによって成長していきます。自分の殻を破るには、自分ひとりの力ではもちろんできないので、多様な対話や体験、協働的な活動などを通してそのきっかけをつかんでいきます。

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★そして、他校にはない森の教室という空間が強烈に生徒のメンタルモデルの成長をアフォーダンスしていきます。あのヘンリー・ソローは森の生活を通して、人間のウェルビーイングを生み出す活動をしました。おそらく、生徒は気づかないうちにそのような影響をソロー同様パウロの森から影響を受けることになります。

「どちらへ歩いていこうか決めるのがかなり難しいときがあるのですが、なぜでしょうか。「自然」の中には微妙な磁力があると私は思っています。知らず知らずそれに従うなら、ふさわしい方向に導いてくれるでしょう。私たちがどの方向へ歩くかは、どうでもよいことではないのです。ふさわしい方向があります。しかし不注意と愚かさのために誤った方向をとることが、とても多いのです。現実の世界でまだ歩いたことのない道、内面の理念の世界で旅する道を、歩いてみたいものです」(ヘンリー・ソロー「歩く」62ページから)

★パウロの教師は、生徒といっしょに、自らも内面の理念の世界で旅する道を歩いています。生徒1人ひとりにとってふさわしい方向を見つけるためのキャリアデザイン。その過程で大学の一般選抜を突破する必要があるのなら、放課後ヴェリタスという講座を開設します。総合型選抜で行くというのなら、探究ゼミやボランティアの活動を共に深く深くアプローチしていきます。海外大学の環境を選ぶというのなら、ともに合格戦略を考案し、徹底的に英語で対話していくでしょう。

★1学年の定員80名だからできる個別最適化と協働学習の統合化、学習指導と生徒指導の一体化、探究と進路の一体化、身体とメンタルと社会性と超自然的精神の循環化の教育活動をしています。80周年に向けて、繊細にそして大胆に教育システムをトランスフォームしていくでしょう。

★それが小島綾子校長のチーム作りです。勝俣副校長、大久保教頭、松本主幹が校長を支えながら進む期待のパウロ学園です。

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変わる私立中高(32)越境知を体験する中高生①工学院・聖学院・和洋九段女子の生徒たち

★21世紀型教育機構の教育研究センターは、いまそしてこれからの私学人としての教師=SGT(スーパーグローバルティーチャー)とは何かを加盟校連携してPBLを企画運営することを通して考案しています。お互いの授業づくりのシェアリングや、昨年夏は実際に木更津にあるクルックフィールドで合宿セミナーも行いました。PBLの作り方を実際にワンアースという循環に寄与するクリエイティブな学びを教師も生徒も共に創るという挑戦でした。そして、その流れの中で、加盟校同士の生徒が交流し越境知を体得するプログラムが生徒主導で生まれました。

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(写真は工学院のブログから)

★私立学校というのは、独自かつ普遍的な建学の精神に基づいて独自性・先見性・先進性を発揮しています。外国に行くのも多様性の体験ができるのですが、それぞれの私学の文化を体験するのも多様性の体験ができるのです。すでに、聖学院に3校の生徒が訪問して交流をし、先日工学院に集結しました。

★キャンパスという空間は、学校によってそのアフォーダンスの意味や価値、文化が違います。自分の学校のことは意外と習慣化しているので、気づかないことも多いのです。他校の生徒と語りながらキャンパスを歩き、特色ある空間でどんな学びを自分たちは経験をしているのか言語化するのは暗黙知を形式知化するのに有意義なのは説明するまでもないでしょう。

★また、自分たちでは気づかない感じ方や考え方もフィードバックしてもらえます。お互いに自分というメンタルモデルと学校という文化的なメンタルモデルを確認し、共有できます。

★インスパイアーされたり、ケミストリーが起きたりするのです。そして、自己とは何か振り返ることもできます。

★この3校交流会は、今後いろいろな社会課題などについて対話が越境的に行われていくでしょう。参加者も増えていくでしょう。教師も気づきが多いと思います。チェンジメーキングが学校の文化になっているところ同士は、教師も生徒ももっと視野を広め、洞察を深め、社会貢献活動を創発しようという流れになっていきます。

★小さく始まって、大きく動き出すに違いありません。

★日本の教育を変えるのは、教師ばかりではなく、生徒自身でもあります。こうして越境知体験をすることは、まだまだ生成AIではできない学びですね。

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変わる私立中高(31)シンプルで根源的関係性の循環が生成する生命知 チャットGPTが映し出すコト

★先週、木金土と幾つもの会合に参加しました。もちろん、すべて私立中高関係者です。人数で言ったら300人は超えているわけです。しかも、学校組織やコミュニティで活躍するリーダーたちばかりです。学校組織のリーダーは、タイトルリーダーで、コミュニティのリーダーはナチュラルリーダーですが、両方とも共通しているのは、サーバントリーダーのペルソナを分有しているということですね。

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★3日間、懇親会もあったので、疲れもしましたが、とても心地よい疲れでした。よって、昨夜帰宅後、シャワーを浴びて、妻がジャカルタに行っている娘と孫と話をしている横で、爆睡してしまいました。

★で、夢の中で降りてきた(笑)のが、上記の図でした。不思議なことに、この3日間、愚痴というものを聴く機会が圧倒的に少なくて、ほとんどが好奇心旺盛な希望に燃えた改革の話ばかりでした。年度初めの会合ですから、当然と言えば当然ですね。

★しかし、夢の話ではなくて、実践し始めているケースを出し合って話すわけですから、地に足着いた話でした。

★それにしても、そのとき必ず話題になるのが、チャットGPTです。内閣府がガイドラインをもうすぐ出すというニュースも重なっていたので、なおさらだったのかもしれません。

★多くの人が、チャットGPTの可能性を実際にGPTと対話しながら語るので、これもすごいなあと思いつつ、オオーっと思ったことは、人間がやるべきことが明快になってくるということですね。

★人間にしかできないことが明瞭になってくるのです。チャットGPTはまさにソクラテスさながらの役割を果たしているわけです。

★もちろん、チャットGPTが進化してもっとはっきりしてくるでしょうが。ともあれ、今のところは、好奇心は人間の専売特許かなと。既存のデータに基づいて私たちも対話しますが、これはGPTは抜群です。ところが、私たちは、一方でそれぞれの好奇心に基づいて対話をすることができるのです。そして、まずはやってみようかとなる。もちろん思考錯誤しながらですから、行動ではなく「考動」です。そして、そのあと、最近ではリフレクションとかモニタリングと言われますが、「熟慮」するわけですね。そこでとても大切な「問い」が生成されるわけです。

★シンプルで根源的な関係性。関係性というのは、人間同士だけではなく、自然と社会と精神とAIを含む超自然みたいなものの関係性です。この4つのつながりがウェルビーイングになるには?とい発想にいきつくわけです。行き着いたら、不思議なことにまた新たな好奇心が生成されます。このようなシンプルで根源的な関係性の循環が生み出す生命知は今のとこと主観性と自己認識を持っていないチャンットGPT には生成できないなあという了解を対話によって共有できます。

★その関係性を上記の図のようにSFRとすると、このSFRをどうするかで組織開発をプランできるし、授業デザインができるし、プロジェクトを企画運営することもできるでしょう。

★とかくものごとを考える時、現実と理想のギャップを認識して、何が問題なのか洗い出し、優先順位などを考えて、問題解決をしていこくとするのがすべてだと考えてしまいがちです。今や世の中は問題解決症候群ともいえるほど息苦しく重苦しい会議が多いのかもしれません。

★しかし、この3日間は、なぜかわからないけれど強烈に好奇心が旺盛になるというところから始めてみようという対話が多かったのです。そうなってくると自分の想いを語り、また他者の想いに耳を傾けるという雰囲気が広がります。誰か1人だけが言いたいことを弾丸トークするというのではなく、好奇心に満ち満ちたオープンな場が出来上がり、それぞれが新たな問いを生成し、それをシェアしていける場。

★こういう場を作ることができる私学人が目の前にこんなにいるのだと改めてインパクトを感じました。明日は学生起業家と対話する予定になっています。

★会う人会う人がチェンジメーカーだしチャレンジャーです。そこでは誰も対症療法ではなく根源的なコトを極めつついろいろなアイデアを考案し、試行錯誤しているのです。このSFRの循環の場を創出する自由がある限り、世界は希望に満ちていると楽観的にならざるを得ない日々です。

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2023年5月27日 (土)

GLICC Weekly EDU 第129回「成立学園ー『探究!見えない学力』ー」 地球に立って感じ、考え、行動するメンタルモデルが成長する

★昨夜、GLICC Weekly EDU 第129回「成立学園ー『探究!見えない学力』ー」がありました。驚きでした。成立学園と言えば、氷山モデルなのは有名です。中学が開設されたときから、氷山モデルを前面に出して学力観を説明し、実践し、成果を出してきました。氷山モデルブランディングが成功したということでしょう。ところが、今回の宇田川先生の丁寧で情熱的なお話をお聴きして、気づいたのは、生徒は日本という国でたしかに生活しているのですが、生徒自身は、地球に立って体験・冒険をしながらいろいろなことを感じ取り、考え、表現し、行動しているメンタルモデルを豊かにしているということが了解できたのです。

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★氷山モデルは、見える学力と見えない学力の学力構造であると同時に、その学力観によって生成されるメンタルモデルの構造でもあったのだと気づいたのは、衝撃的でした。WOW!です。

★ですから、生徒たちは地球を基盤にしているので、ことさらグローバル教育と言わなくても、生徒は日常で英語を活用し、ディスカッションし、自己表現し、好奇心を探究心に転化し、進路準備をしていきます。驚いたことに、国内の大学と海外の大学の両方を合格し、どちらに進むかを選択するという学園生活を送っている生徒がたくさんいるのです。

★成立学園の成長曲線は、メンタルモデルが豊かになっていく軌跡でもあります。内なる目に見えない豊かなメンタルモデルが根付いて卒業するから、大学で、社会でプロジェクトリーダーになって活躍するのだと思います。グローバルリーダーになっていくといっても過言ではないでしょう。

★さらに驚いたのは、中学の定員は、40名です。それに対し、2科、4科、適性検査型、ナショジオ+算数入試の4種類の入試があるのです。しかも、英検や数研の級は、スコアによって違いますが、得点として加味されるわけです。これはすべての入試で有効です。

★基礎知識を創造的に獲得するのが得意な受験生、論理的思考が得意な生徒、自然に対し好奇心旺盛で科学的眼差しを持っている受験生、英語が得意な生徒、小学生にしてすでに数学に好奇心を持っている受験生など、多様な才能者を受け入れる入試が実施されているのです。

★中学のカリキュラムが、先取りというアクセラレーション型のシステムではなく、エンリッチメント型のとにかく知識ではなく知恵が時熟していく豊かなカリキュラムになっていますから、いわゆる従来型の中学受験の偏差値尺度の知識は、中学3年間で十分に体得できてしまいます。そして、それ以上に地球冒険をしながら、ものの見方・感じ方・考え方・行動力という知のメンタルモデルが生徒の内面に芽吹き生長していくわけです。

★ぜひご視聴ください。理想の学校が、北区という地球の1エリアにあるのですから。

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2023年5月26日 (金)

変わる私立中高(30)生成AIが育成する資質・能力 文科省の懸念と期待

★5月23日、文科省は各学校に次のような通知を配信しています。「Chat GPT 等のいわゆる生成 AI を活用した様々なサービスが生まれる中で、学校現場における生成 AI の利用については、AI による誤回答や AI 生成物か否かを見分けられないなど、様々な議論や懸念の声があるものと承知しており、子供達の批判的思考力や創造性への影響、個人情報や著作権との関係などについて整理が必要であると考えております。
一方、学習指導要領では、「学習の基盤となる資質・能力」として、「情報及び情報技術を適切かつ効果的に活用して、問題を発見したり、自分の考えを形成するために必要な能力」である「情報活用能力」を位置付けており、新たな技術である生成 AIを使いこなすといった視点も必要です。これらを踏まえ、文部科学省では、政府全体の検討状況や中央教育審議会の議論を踏まえ、生成 AI の学校現場での利用に関するガイドラインを夏前を目途に策定・公表することとしておりますので、お知らせいたします。」と。

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★夏まで待とうと思うけれど、文科省は子供たちの批判的思考と創造性にネガティブな影響を与えるのは避けたいと、逆に言うならば、批判的思考と創造性を大切にしているということが改めて確認出来てうれしいですね。

★さて、チャットGPTに、「君は批判的思考や創造性を豊かに持っているの?」と聞くと、瞬時に「私は大きな言語モデルであり、批判的思考や創造性のような人間の特性を持っていません。私は与えられた情報を元に文章を生成することができますが、自己意識や主観的な思考は持ちません。ただし、私が持っている情報を利用して、問題解決やアイデアの提供をすることは可能です。」と。

★なんだ安心じゃないかと思いきや、でも提供は可能だとある。おやっと思い、何か具体例、災害を起こす原因の一つである気象変動を防ぐにはどうしたらよいかと尋ねると、これまた瞬時に大量に回答するのです。あまりに膨大なので、400字でまとめてよと訊くと、「気候変動を防ぐための取り組みは多岐にわたります。温室効果ガスの排出削減、再生可能エネルギーの利用促進、持続可能な交通手段の普及などが重要です。また、森林保護や循環型経済の推進も効果的です。教育と意識向上も欠かせません。さらに、持続可能な都市計画や農業・食品生産の持続可能性の向上、国際協力と政策調整、研究と技術革新も重要です。これらの取り組みは統合的かつ継続的に行われるべきであり、個人の努力だけでなく、政府・企業・国際社会の協力が必要です。気候変動対策は緊急を要し、早急な行動が求められています」と。

★とくに批判的思考がはいっているわけでもないし、創造性によって作成されているわけでもないから大丈夫だ。というわけにはいかないですね。

★情報収集し整理するときに、論理的にただ整理するわけではないのです。このような整理の仕方に整合性があるかどうか論理は明快だけれど、妥当性や信頼性はあるのかとチェックするときに批判的思考が稼働します。何か違和感を感じたり、この見通しでは将来どうなるのだろうか未来から考えるとき創造性はいるでしょう。

★その結果上記のチャットGPTのようになるかもしれません。それがもちろん、既存の情報に過ぎないので、さらに新しい発見をとなるのですが、この端的な制作的創造性以外に、意外と大事なのはプロセスの創造性です。知識を記憶するときも実は創造性が必要です。

★そういう意味では、チャットGPTが与える影響力は、微妙ですね(汗。

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変わる私立中高(29)教育市場の量と質が変化 21世紀型教育機構定例総会で改めて気づく

★昨日は、一般財団法人東京私立中学高等学校協会の常任理事会、評議員会、定例総会と一日がかりでありました。その後夜は、21世紀型教育機構の定例総会があったわけです。年度初めですから、日本中、各所各領域で総会が行われている時期です。東京私学全体と21世紀型教育機構という有志のコミュニティは、シンクロするところが多いのですが、その共通部分があるがゆえに同機構の独自性も見えてきます。

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(昨年夏、クルックフィールドで、21世紀型教育機構のSGT:スーパーグローバルティーチャーのプロジェクト合宿シーン)

★東京の私学全体は、確かに大きく転回しながら変化していっています。そして、それを個々にまで接近して見てみると、素早く変化しているのです。この大きな転回と速い転回は、つながっています。

★よく教育は企業に比べて変わらないと言われます。でも、その企業というのは、かなり個別的な話なのです。GAFAMなど企業全体の動きではないのですが、その動きが地球上の企業の動きの速度だとメディアは論じがちです。

★教育業界人の、そういうわかりやすい通説を語りたがる人は多いですね。そして、それに比べて学校はどうのこうのと、およそ社会構造や経済政治システムとの連動を無視して語る人。言論の自由ですが、そういう人に限って社会構成主義だとか。。。???です。

★それはともかく、マクロでみると、地球で生活していて自転を体感しないように、教育全体の変化は感じにくいものです。でも、同機構のように10校くらいのコミュニティの動きを見ていると、なるほど着々と変化しているなあと実感するのです。

★1校ではなく複数の学校が参加しているスモールサイズのコミュニティであることに意味があります。それは全体の動きとコミュニティの動きの共通点がはっきりみえるからです。そして相違点も。

★1校だけだと、それが全体とどうかかわっているかが見えにくいのです。独自性ばかりが目につきますから。

★全体も同機構も、私学経営の方法を先鋭的にしようとしています。それからこれからの教師を、同機構のSGTのように公立学校の教師像にさらに付加価値を生みだしています。

★そして、その前提には、教育市場の垂直的序列型、つまり優勝劣敗型から水平的多様性型、つまりすべての生徒がオンリーワンとして卓越性を生みだせる教育市場に変化しています。

★そう感じない人は、自分が垂直的序列型の市場を容認しているアンコンシャスバイアスがあると思ってみるのもよいかもしれませんね。

★おそらく10校のコミュニティが、2011年からはじめたこの垂直的序列型教育から水平的多様性型教育へのシフトが市場で共感を得て、その市場が広がったという力学と垂直的序列型優勝劣敗市場が悲鳴を上げて同機構のような教育を希求したというニーズがあったからでもありましょう。

★教育の変化の創出が先か市場のニーズが先か、それは循環しているので、どちらでも構いません。大切なことは教育の変化と市場のニーズの変化がマッチングし、化学変化を生み出しているということです。

★思考力と英語力とICT力というシンプルな能力の組み合わせがどんどんフラクタルのように増殖している音が聴こえませんか?耳を澄まして、その響きを聴きましょう。そして、ワクワクその響きをいっしょに奏でようではありませんか。

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2023年5月25日 (木)

変わる私立中高(28)どうする?リバタリアン・パターナリズムとリベラル・コミュニタリアン

★本シリーズ27回目で、私立学校に対する国の政策を多様な法制度の変遷でみてみました。そのとき、当時私学撲滅法とも言われていた「私立学校令」の官学重視度がどれほどのものかをイメージしたかったわけです。しかし、その前に日本の初代文部大臣森有礼が徐々に国体主義的な法律を次々と作っているのをさらりと添えておきました。

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★列国と肩を並べるために急激な民主化を果たそうとし憲法まで発布してしまう当時ですから、森有礼の業績はすさまじいとは思います。教科書的には、今の日本の教育の枠組を形成したとあるわけです。それはそうだと思いますが、私立学校からみると、称賛ばかりはしていられません。

★森有礼は、明治憲法が発布されるその日に暗殺されます。その理由は歴史家に任せるとして、その後すぐに教育勅語がでてくるのです。これは森有礼の意志を継ぐものなのか?いやそうでもないのです。

★というのも教育勅語の起草者の1人元田永孚は、森有礼が生前の時は、その教育思想において共鳴していながらも、森のあまりのラディカルぶりに懸念を感じていたと語る学者もいます。元田は儒教主義者だし、森は最初は啓蒙思想を受容し、のちに英米訪問してスペンサーの影響を受け、社会進化論的な発想になっていくらしいのです。ともに明六社でいっしょだった東大初綜理の加藤弘之が啓蒙思想を捨て、社会的進化論に突き進み、優勝劣敗思想をベースにしたのと同期していたのかもしれません。

★ですから、森はルソーに代表される啓蒙思想はやめたのだと思います。ルソーと言えば、一般意志による社会契約です。その前提に自然状態があるのは周知の事実ですが、ルソーは、全体意志に従うなといっているわけです。

★全体意志とは、簡単に言えば独裁的権威や権力でしょう。一般意志は、いまでいうブロックチェーン的な市民全体が自らリスペクとする意志ですね。

★全体意志の中で自由を担保しようと。森は初めての契約結婚をしたで有名ですから、社会契約を全体意志によるものとみなしていったのかもしれません。

★したがって、リバタリアン・パターナリズムだったのでしょう。この真偽はわかりません。あくまで私の妄想です。ただ、明治憲法発布の時に暗殺さることにより、リバタリアン部分は完全に削除されたわけです。パターナリズムが第二次世界大戦まで続くわけです。

★そこから戦後、教育刷新会議が立ち上がり、内村鑑三、新渡戸稲造門下生、つまり私学人の多くが参加し、教育基本法を成立させました。これはリベラル・コミュニタリアン的な発想です。自由なんだけれど、あくまでそれは利他主義を持続可能にするシステムであるということです。

★実は、これがルソー的な一般意志による社会契約だと私は思っています。

★ルソーは、ちゃんと儒教の影響も受けていたので、ルソーを受容するのに、明治の私学人は抵抗はなかったのだと思います。

★もちろん、話はそう簡単ではないでしょう。ポリティカルとルサンチマンの混在した権力闘争が歴史の背景にあるからです。

★しかし、いずれにしても、パターナリズムは、現在では受容されない抑圧的なものがあります。

★現在は、この傾向や性格にものすごい社会的モニタリングがグローバルレベルで動き始めています。

★それは、歓迎すべきでありますが、歴史は少なくとも両義性で動いていますから、そこは冷静に観察・考察していく必要がありそうですね。

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