★充足率V字回復5つのパターンのうち、DとCが最も難しい。図を見ていただければわかるように、充足率が90%や80%は、学内全体には、まだ大丈夫、たまたまだろう、少子化だからだろう、経済の空白が長いからという雰囲気が支配しているからです。この支配を払拭しないで放置しておくと一気呵成に充足率50%をきるという窮地に落ち込みます。ですから、経営陣は新しいプログラムを入れたり、外部コンサルタントを招いたりと体質改善を図ります。パターンDの場合は、それでうまくいくときもありますが、それだけだと3年後には再び充足率100%を下回ります。

★充足率が100%いかなくなったとき、すぐに短期的な戦術を行うことは重要です。同時に、中長期的な戦略も立案して様々なリスクに備えるマネジメントをしておく必要があります。
★短期的には、入試改革(入試要項の変更)をまずします。すると、それを受験市場に周知徹底する動きを広報部がするので、学内の雰囲気は部分的に活性化します。それだけでうまくいくときもありますが、長続きはしません。
★やはり、教育内容とその内容を有効にする教育システムの内部要因も中長期的にどう変えていくかを、広報チームが市場に共有できるようにしていくことが必要です。そうすると、結局教育の質が大事なのですが、質は見えにくいので、丁寧に諦めずに共有していくこととして、市場が飛びつくのはどうしてもわかりやすい新しいトレンドをつくることです。
★前回ご紹介したパタンEの学校は、すでにブランド力を定着させているので、大学合格実績さえ出していれば充足率100%以上は持続可能にできます。しかし、パターンDは自らブランド力を創る必要があります。かといって、パターンEのブランドを超える様なことをぶち上げると、受験市場では反発もでます。日本人特有(実はどの国もですが)の出る杭は打たれるわけです。
★このとき、どういう表現をしていくかは重要です。それと覚悟が大事ですね。そんな新奇なことをいうと塾業界が引いてしまうと思うのか、覚悟を持って貫いていくと意思決定するのか。
★そのとき、学内の教員がどちらの価値を重視するのかです。前者が支配的になると、結局教育内容の質は変わらないように見えます。後者は相当対話型組織を教員同士がしっかり作っていかねばなりません。学校に限らず、この組織作りこそ厄介なのです。パターンDぐらいの状況だと、学内の教員の入れ替わりはないので、価値の転換を全員に求めても、サイレントキラーはいるものです。ですから、20%くらいの先生が対話型組織をつくれるように、教頭はエンパワーメントする必要があります。もっとも、教頭がサイレントキラーという場合もあります。理事長・校長はそこはきちんと日ごろから対話をしておく必要があるでしょう。というわけで、パターンDは、組織マネジメントがかなり難しいのです。ここで、成功している学校こそ、学校改革のスーパーモデルになるでしょう。受験生が、このような学校と出会った場合、対話型組織を教師と共に創っていくことになるので、豊かに成長していきます。
★パターンCも、実はDとある条件を除いて、ほぼ同じです。ある条件を除いていてというのは、充足率80%前後だと、教員が他の学校に逃げ出すことがあります。逃げる要因は、経営上新しいことをやらざるを得ないので、それには反対だと感じる教師や新しいことをやっても組織は変わらないと判断する教師などがでてきます。また、自分の人生の見通しが立たないのではないかと経済的リスク回避のためというのもあるでしょう。
★このような状況は、一瞬学内は混乱します。しかし、その状況下で新しい教師を採用する時に、新しい学校になることをいっしょにやってくれるかどうか確認をします。3年間くらいはこのサイクルを続けると、学内の20%と新人教師の割合20%が合わさって、40%前後は不易流行を実施するプラグマティックな動きができかつネガティブケイパビリティー旺盛な精神(矛盾や困難を引き受ける気概)も広がっていきます。学内組織は対話型組織に変わっていきます。この変化は内部要因なのですが、40%以上という量は対話型組織の3f精神(フラット・フリー・フレンドシップ)の雰囲気を外部に漏れ伝えていくことになります。
★口コミが広まり始めるし、そのような組織は生徒がアクティブになりますから、いわゆる主体性も生まれてきます。教師と協力するのも大歓迎です。大学実績がぐんと飛躍します。このような学校は、グローバル教育とSTEAM教育をやっていますから、総合型選抜、海外大学受験にも積極的になります。充足率を100%超えるようになるし、40%の量と質が学内全体、保護者も、市場もその学校のイメージを変えていきます。同時に40%の量と質が拡大します。
★しかし、この対話型組織を最適化し続ける戦略はかなりの難しさです。校長と教頭と各部長のリーダーシップの合力が並大抵ではありません。時代の精神に翻弄されないように同時に時代の先を歩んでいくタイプでもあるので、固定的なシステムを安定させることはできないからです。常に東大20人以上いれるとか、海外大学でトップ10の大学に5人以上入れ続けるとかいうのであれば、そこのシステムは固定化できます。しかし、そうなればパターンEのグループに入るのですが、そこに行くまでには、対話型組織の最適化の調整をし続けなくてはなりません。
★もちろん、そのような組織がうまくいっているとき、在校生は痛快です。小学校や中学校では、偏差値で学力差があるなどというアンコンシャスバイアスを自分の中にかかえていたものが、全くそんなものは幻想(ファントム)だったのだとポジティブ学園ライフを送り、行きたい大学に仲間と共に自分の力を高め進めるのです。もちろん、その先の未来に希望をしっかり胸に刻めるのですから。
★実は、これも、2011年の忘れてはならない3・11以降のダイナミックな価値の転換の流れをくむものです。それ以前には、このようなV字回復はなかなかなかったのです。そもそも対話型組織というアイデアすらなかったでしょう。
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