2024年12月12日 (木)

八雲学園をカリフォルニアから考える(6)中学選びの考え方・価値観を変える

★医学博士成田奈緒子さんが、中学受験準備や学校選びの考え方を変えることを提案しています。最終章で、教育ジャーナリストの中曽根陽子さんと対談もしていますし、ご自身大学で教鞭をとるだけではなく、小児科医として子育ての相談にのる団体も立ち上げていますから、塾業界とも距離を置ける立場から、中学受験現場を鳥の目と虫の目の複眼視点で論考しています。特に身体の健康、メンタルの健康、人間関係の健康、生きる意味の豊かさを幼児期から大人になるまでにウェルビーイングな生き方にしていく自分の総合的な力をいかにつくるかということについて、脳科学的なグローバルな視野で考えているのが参考になります。

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★編集部による上記の新書のタイトルの付け方が、私にとってはちょっと共感的でなくて購入するのを躊躇しましたが、ネット記事で一部抜粋が紹介されていて、極めて本質的で受験生や保護者に寄り添ったアイデアが書かれていると直感し読んでみました。

★1つのことを除いて、ほぼ納得のいく話でした。この1つのことも、受験生・保護者の方に対しては十分に思いやりのある文脈ですから、同書の目的としては全く問題ありません。ただ、私立学校側としては、そうとらえては、教育の質もあげられないし、新たな経営もできないし、何よりウェルビーイングな社会を形成する気概や<考動>にブレーキをかけるなと思った次第です。

★その一つのこととは、完全なユートピアの学校はないから、自分の期待とギャップはあったとしても、それはどこの学校でもそうで、自分がどのように捉えるかが大事だというような趣旨です。

★たしかに、期待のし過ぎはよろしくないのですが、私立学校側としては、建学の精神やパーパスを共に創っていこうという意欲をもって入学する生徒の期待を裏切らないように全力を尽くしたいという気概があるものです。もちろん、神様ではないので、何でもできるわけではありません。しかし、お互いを理解して共鳴共感共振して人生をつくっていこうとする点で一致しているならば、その都度アップデートしていけるのが私立学校のユートピア的なマインドなのです。

★その決定的な例が、完全なユートピアは存在しないという境界線を懸命に乗り越えて進化してきた八雲学園の近藤理事長校長と共に教育を積み重ねてきた先生方です。

★八雲学園の中3の担任の先生方は、中3全員がカリフォルニア州のサンタバーバラの八雲レジデンスでの研修に当然同行します。その他多様なサンタバーバラを拠点にしたプログラムにも同行します。生徒ばかりか先生方も、全員が6年間に少なくとも一度はカリフォルニア経験をするのです。

★「八雲レジデンスーケイトスクールーUCサンタバーバラーサンタバーバラの中心地」のスクウェアをぐるぐるラウンド経験するのです。日本のすばらしさと限界、米国のすばらしさと限界の両方が見えると同時に、ケイトスクールの生徒やUCサンタバーバラの教授陣や学生が、そのすばらしさと限界を分析・認識し、問いを生み出し、限界を超えようとしている姿に驚愕するのです。それは生徒ばかりではありません。先生方もそうです。何気ないキャニオンと海岸の間におしゃれでフラットな雰囲気の街並みがありますが、そこで生徒とショッピングしたり食事をして驚くのです。日本では特別なところに行かなければ経験できない生活の豊かさを。もっともサンタバーバラに来ている時点ですでに特別なところに来ているわけですが。

★サンタバーバラのキャニオンから街並みとその向こうの海を眺めながら、同時に星々を眺めながら、Only One Earthの息吹を素直にストレートに受容します。

★完全なユートピアはないと思った瞬間、そこはデストピアです。ユートピアとデストピアは表裏一体だと私立学校は思っています。ユートピアを不完全なままでよいのだと思うことは、デストピアのままでよいと思うのと同じなのです。

★シアトル時代からカリフォルニアの友人ネットワークを豊かにしてきた八雲学園のグローバル教育の歴史は、近藤理事長校長にこう語らしめます。「これでいいと思うことはないのですよ。常に進化し続けようと思っています」と。不易流行の心意気のオーラを近藤先生は常にまとっています。私学人のスーパーモデルであるゆえんです。

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八雲学園をカリフォルニアから考える(5)UCサンタバーバラで学ぶ八雲生

★八雲学園の3カ月留学には、毎年16人くらい八雲生は参加します。3か月の中に夏休みの期間をいれます。すると、その期間、UCサンタバーバラの学生寮を使い、同大学のキャンパスで、同大学の教授に英語という言語能力や言語文化を対話型で学びます。その他の期間は、サンタバーバラにある八雲レジデンスを使ったり、ホームステイなどを組み合わせます。

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★最近、高大連携がトレンドですが、八雲学園は、夏休み1カ月みっちりUCサンタバーバラで学ぶわけですから、随分前から海外大学と高大連携を行っているといえます。イエール大学とも国際音楽交流を毎年行っていて、これも高大連携のバリエーションの1つでしょう。

★このような日本の大学では考えられない、多様性が維持され、学部レべルでも研究への道をしっかり進めていく学生との交流が、刺激的でないはずがありません。海外大学に進む八雲生が爆増しているのは、そのような海外大学との高大連携が影響しているのは間違いないでしょう。

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★UC系の大学は、どこでも学生が真剣にそして大量の論文を読み漁り、理系も本格的な実験をしながら大学生活を過ごします。ラウンジでランチをとりながら、ラップトップをたたきながら、学んでいます。対話もしていますが、知的好奇心が溢れた感じです。

★実に羨ましいですね。自分の子どももUC系レベルの大学に留学させたいと思いますよね。

★でも、学費と寮費など生活費を合わせると年間1000万円はかかります。一般にはとても無理だと思われがちです。スカラーシップもありますから、挑戦すると必死に立ち臨みます。

★そして、実はご家族の皆さんも俄然頑張るケースが増えているのです。中学入試の準備をするときから、八雲に入学して6年後、海外大学を想定して、自分たちはどんな仕事をするのか、あるいは起業するのか、あるいは投資するのか、やはり必死に考え行動します。

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★偏差値競争などすっとばして、UC系大学レベルの海外大学を想定する中期のライフプランを立てると楽しいのです。それに、そこを目指して頑張っていると、進路変更しても、上智やICUなどもちろん早稲田や慶応なども自ずと開けてきます。そもそもそのような生徒を受け入れられるようにこれらの大学は入試改革をどんどん行っているのです。

★海外大学は、知性や感性、そして包括的脳神経身体系が豊かに育っていなければ合格は難しいのですが、こんな全人教育を経験できる八雲の6年間なら、中学受験競争で燃え尽きてしまうという心配もないわけです。他と比べて自分を考えるのではなく、自分の中の自分を鍛えていくのですから。

★八雲学園のような海外大学との高大連携を行う私立学校が増えてくれば、そこで学ぶ生徒の能力だけではなく、家庭の経済状況も向上します。日本の経済を支えることになります。

★中学受験のデメリットばかり、メディアは取り挙げがちですが、そんな雰囲気をポジティブに転換する方法を考案してもらいたいものです。ゴーレム効果をピグマリオン効果にシフトしたいですね!八雲学園に大いに学びましょう。

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工学院(2) 田中教頭インタビュー第2弾 オープンマインドの世界に通じる意味

田中教頭のインタビュー第2弾は、受験生を対象しているため、わかりやすく読みやすいけれど、示唆される部分もさりげなく盛り込まれています。

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(工学院×文大杉並×和洋九段のIBL型対話WSで)

★たとえば、こんな箇所です。

 どんなに静かな生徒でも、内に秘めた思考は必ずあるので、”伝えるべき時に伝えられるように”していく。逆に発語の多い生徒は他者の理解を得るためにまずは思考をまとめる力が必要かもしれません。それぞれに応じた力をつけていき、思考を拡げる機会を増やすこと、グッと一歩を踏み出す勇気を持たせることが私たちの役目です。

★工学院は、IBLやPBL型の授業をしています。したがって、心理的安全な対話の環境をデザインし、生徒1人ひとりがオープンマインドを生み出せるようにしています。

★しかし、このオープンマインドは、心理的状態だけではなく、オープンマインデッドネスというその心理的な受容と偏見を持たない公平な態度をとる様子をしっかり見守っている様子がこの箇所には書かれています。

★開放的というのは、笑顔で、言いたいことを何でも言えることではあるのですが、そのような態度はオープンマインドを生み出す多様な態度の一つに過ぎないのだと田中教頭は語っているのです。というか実践しているのです。

★ケンブリッジインターナショナルスクール認定校ですから、イギリスの教育もしっかりと受容しているのが工学院です。日本の小仲学校だと手を挙げてよく発言する生徒は積極的で、内向的で熟慮している生徒は消極的だと評価しがちなのですが、イギリスの教育では、そこは議論され、内向的だけれどオープンマインデッドネスとしての態度をとることができないわけではないことを理解しているわけです。

★オープンとは、快活であるなしにかかわらず、公平な眼差しを持っている自分軸の視座のことを、田中教頭は示唆しているのです。そして、そのうえで、GROWTH MINDSETを生成しているのです。グッと一歩生み出す勇気というGRITもですね。

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2024年12月11日 (水)

2025年中学入試動向(33)聖学院 STEAM教育 成果着々

★永井健太さん、おめでとうございます!聖学院のサイトに私にとっても嬉しい記事が掲載されています。<「日本図学会第一回高校生デジタルモデリングコンテスト」審査委員長賞を受賞!~デジタルモデリングで描く未来~>がぞれです。ぜひご覧いただきたいのです。

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(写真は、聖学院サイトから)

★12月8日(日)、日本図学会主催の第一回高校生デジタルモデリングコンテストにおいて、聖学院の永井健太さん(高1)が栄誉ある審査委員長賞を受賞したということです。このコンテストは、高校生たちがデジタルモデリング技術を駆使し、創造的なアイデアを形にする挑戦の場として注目を集めているようです。

★デジタルモデリングとかプロトタイプとか、いったい永井さんがどんなすてきなクリエイティビティを発揮したのかについては、同記事に詳細にまとめられていますので、そちらを是非ごらんください。

★私が嬉しいと感じたのは、なんといっても、聖学院を訪れたとき、ファブラボで生き生きとプログラミングなどをしている永井さんに会ったことがあるからです。それ以外でもすさまじいチャレンジングなスピーチに驚かされたこともあるのです。また、英語のイマージョン授業におけるミニ模擬国連のワークショップでも溌溂と取り組んでいる姿に出会っているからです。時間があれば、ファボラボでいろいろ制作しているんでいよと笑顔で接してもらったこともありました。

★その永井さんが受賞したというのですから、感動しないわけがありません。

★それと、もう一つ嬉しいことは、聖学院のSTEAM教育や環境(また新しい空間もできたようです。今度見学にいきたい!)の成果が着々と生まれているということなのです。

★聖学院のSTEAM教育は、部活でだけではなく、授業の中できちんと行われていて、一部の生徒だけが取り組んでいるわけではないのです。永井さんの多くの仲間がいるということが、今後ますます期待が高まります!

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八雲学園をカリフォルニアから考える(4)ケイトスクールとの類似点いくつも

★サッチャースクール、チャドウィックスクールなどカリフォルニア州のいくつかのエスタブリッシュなプレップスクールを見学したことがありますが、念願かなってケイトスクールを見学することができました。そして、驚きました。そのあまりの破格さに。何より姉妹校とは知っていましたが、八雲学園とあまりに類似点が多いことに感動しました。

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★その類似点は八雲学園の東京の八雲の地とサンタバーバラの八雲レジデンスの両方の学び舎を合わせて、ケイトスクールを見ていくと、それが見えてきます。ケイトスクールの図書室を見て、八雲学園のおしゃれなそして没入できるようになっている光の空間デザインは、ケイトスクールの図書館を見て、なるほど共振していると感動しました。

★それから、何気なくケイトスクールを歩いていると、目の前に広がる山また山。ケイトスクールの敷地だというので驚きです。がしかし、八雲学園のレジデンスも同じ山々(キャニオンが南北に走っていて、お互いに延長線上にあるので当たり前なのです)にあるのは全く同じです。

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(向こうに見える山もケイトスクールの敷地です)

★八雲学園の中3生は全員八雲レジデンスを中心に2週間訪れますが、そのスケジュールの中で、姉妹校ケイトスクールとの交流があります。両校ともラウンドスクエアの加盟校でもあります。その理念IDEALSの中の1つアドベンチャーも重要なプログラムです。あの山の中のハイキングを八雲生はケイトスクールの生徒と行います。

★ハイキングといっても、ピクニックではありません。この山は険しいし、キャニオン地形ですから、スカンクは当たり前のようにでてくるし、たくさん動物とも出会います。ただ、ケイトスクールの敷地ですから関係者以外は厳重なセキュリティが機能していて入ってこれないので、安心です(動物の中で人間が一番怪しい?)。アメリカのこのようなアドベンチャーは、日本でも有名なプロジェクト・アドベンチャー(PA)に代表されるように、自然の中での生活にチャレンジするものです。

★ワクワクもしますがドキドキもします。自然の表情の違いを見抜く5つの眼を研ぎ澄ます必要があります。鳥の目、虫の目、魚の目、コウモリの目、心の目などですね。その目は1人では実現できません。協働作業です。勇気もいります。しかし、1人では不安です。互いに勇気を持つようにエールを贈ります。

★生徒が将来困難な局面に出会う度に、勇気と協力という非認知能力とメタ認知能力を駆使して<考動>できる体力が必要です。それを鍛えるエスタブリッシュスクールならではのプログラムです。

★そして、授業の教室が、ケイトスクールは15人がラウンドテーブルを囲んで学ぶ大きさというスモールサイズです。1クラスが15人までの小規模校なのです。ダイナミックな広い空間で寮生活しながら、授業の時には、小さなスペースで学ぶ。ケイトスクールが日本文化を好む発想です。そうですね。茶室発想なのです。あるいは坐禅堂かもしれません。

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(ほとんどのクラスに、このラウンドテーブルが設置。大きなスクエアテーブルも時にありますが)

★アメリカと日本の教育の違いは、クラスサイズですが、八雲学園はバラザミーティングなど、スモールサイズで対話型の学びを多く展開しています。バラザミーティングはケイトスクールもラウンドスクエア同士校として共有しています。

★このように、見た感じ似ているところもあるし、外見上は違うけれど、内面的発想は似ているというというところが随所にあります。

★ケイトスクールは、スペイン語クラス、中国語クラスなどの他に日本語クラスもあります。日本語クラスは人気で、15名満席です。そのクラスのメンバーが八雲学園を訪れて交流もしています。全寮制の学校なので、夜生徒たちだけで学ぶクラスがありますが、それは先輩たちがチュータリングします。チューターは誰もができるわけではありません。教師が認定した生徒のみです。このチュータ経験は、大学のアプリケーションで必要な経験を記載する上で有効です。リーダーシップのポイントになるのでしょう。その選抜にみな意欲を燃やすそうです。

★八雲学園にも、いろいろなシーンで、リーダーになる機会がありますが、同じようにオーディション機能があります。最近では総合型選抜などありますから、たしかに有効です。もっとも八雲学園は、大学のためという理由でリーダーシップを鍛えているわけではありません。大学入試や進路指導の違いは、教育行政の在り方の違いが反映するので、それはしかたがないですね。

★日本の場合、大学に行くために教育があるということはあからさまにはないのですが、欧米では大学に行くための教育と言って何ら問題ないのです。というのは、日本の入試のあり方は、教科の力をみるものですが、欧米の大学は、全人教育そのものを評価するシステムですから。

★もし、八雲学園が東大に入れることを目的にしたら、このような全人教育のような総合力を養う教育はしなかったでしょう。しかし、八雲学園の設立当初からカリフォルニア州と縁がずっと続いているのですから、その建学の精神が基礎学力だけを大事にする教育ではなかったのですね。

★それにしても、八雲学園の学費は、ケイトスクールの10分の1なのです。ラウンドスクエアの加盟校ですから、ケイトスクールのような学校の生徒と国を超え、グローバルな交流ができているのです。海外のエスタブリッシュスクールの学費は、みなケイトスクール並みです。

★それに、ケイトスクールに入学する確率は15%です。

★損得の問題をいうと品がないかもしれませんが、八雲学園は本質的な意味でお得なのではないでしょうか。本質というのは、教育行政の枠組のなかで、国を超えるエスタブリッシュな教育にチャレンジしている学校という意味で人間存在の本来的在り方が生徒の未来に映し出されるのですから。

★この気概と勇気こそ、私立学校のスーパーモデルたるゆえんです。

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八雲学園をカリフォルニアから考える(3)グローカルな諸問題を解決する方法を使う

★八雲学園がグローバルリーダーを育てる拠点は、もちろん八雲学園自身なのですが、カリフォルニアも含んでいるというのが実感なのです。八雲は施設をサンタバーバラの山を開拓してまで作っています。一年中つかわれているわけです。毎日学校のキャンパスを使っているかのような感覚で、年間通じて八雲生は訪れます。全員が一度は訪れますが、生徒によっては何度も来ることになります。ケイトスクールという姉妹校とは、行ったり来たりしますし、交換留学の交流も行っています。

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★八雲学園もケイトスクールも、世界の私立学校のグローバルコミュニティに加盟していて、互いの建学の精神をリスペクトしながら、普遍的なラウンドスクエアのIDEALSを共有しています。そして、そのIDEALSを教育実践するために、12のアプローチをしています。そのアプローチの総称がDiscovereisです。この理念と12のアプローチを表現したイメージ図が上記のイラストです。

★この理念と方法を共有しながら、年に一回グローバル会議を行って、その国や地域社会の問題が世界の問題につながっていることを加盟校の生徒がチームを作りながらバラザ会議を行っていきます。ローカルから入りながらグローバルに進み、グローバルからローカルに戻ることを何度も行き来する往還型の学びと活動を行っているわけです。

★八雲学園は、C!英語×PBL×STEAMを行っていますが、そのPBLや探究は、このIDEALs×Discoveriesの学びの基礎があるのです。

★最近、デザイン思考とかシステム思考とか哲学対話とか、探究の学習のプロセスの中で使うことが脚光を浴びていますが、IDEALS×Discovereisには、それらはすべて包摂されています。

★世界のエスタブリッシュスクールが活用している方法を共有し、フュージョンされています。

★彼らは、国際主義を尊重します。なぜなら、それぞれの学校は国に属しているからです。グローバル会議のために、あるときはオックスフォードに集まったり、ナイロビに集まったり、コロンビアに集まったりするわけですが、そのときにパスポートの価値を身に染みてわかります。

★まずは国がしっかりしていないと自分たちのグローバルな活動は難しいということは経験しています。

★同時に国では解決できないグローカルな問題があることも身に染みて理解するのです。

★国家間で解決が難しい問題を、グローバルな活動で解決できるのか?

★カリフォルニアに少し滞在しただけで、日本のスーパーマーケットが、この地で学んでいるということが手に取るようにわかります。実際北海道だけでしか展開していない大手スーパーマーケットというかコンビニは学びに来ているということを、カリフォルニアの友人から聞きました。別の友人からは、私の居住地にもある大手スーパーも学びに来ているということです。

★食品や料理は、実にローカルな話ですが、環境問題や農業、酪農、マーケティングなどグローバルな話に結びつくということが、すぐに話題になります。そして、ここが学校間の交流ですが、その環境問題や農業、酪農、マーケティングには多様な問題もあり、経済格差の問題も当然あるわけです。

★そんなグローカルな問題解決の話など、日本にいてもできるし、一般的な海外研修でできると思われるかもしれません。

★しかし、継続的にその地域の市民と考え続けることはなかなかできません。

★グローカルな問題解決には、国を超えて市民同士の継続的な目に見えないグローバルコミュニティを創っていくことが本来的には欠かせないののです。グローバル教育と言っても、多様にあるし、それは実はグローバル教育の進化のプロセスでもあります。

★グローバル教育の進化について、今首都圏模試の山下さんや北さんと語り合っています。受験市場とグローバル教育の本質を学ぶ機会を増やしていくことは、私立学校の教育の本質を受験生と共有できる絶好のチャンスだと思います。

★そのとき、進化の最前線に立っている幾つかの学校をモデルとして議論することは生産的でしょう。そのスーパーモデルが八雲学園です。

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2024年12月10日 (火)

2025年中学入試動向(32)湘南白百合 帰国生の特徴が変わる その意味は?

2025年度の湘南白百合の帰国生入試の出願の最終人数が公開されました。A方式が21名、B方式が10名の合計31名です。トータルの人数は、昨年に比較してほぼ変わりません。横ばいということでしょう。しかし、A方式の出願数がB方式の倍以上というのは、昨年と真逆です。これは英語圏あるいは海外のインターナショナルスクールで学んできた生徒が多く受験するということを意味します。

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★帰国生は、❶海外経験を生かせる学校であることがまずは何より大事な志望理由です。そして、➋その次に将来海外大学や東大などの難関大学に進みたいというモチベーションがあります。

★この2つを満たせるグローバル教育を行っている学校として、湘南白百合が選択されたということを示唆する出願の結果になりました。

★帰国生だからといって、すべてが英語が達者な分けではありません。フランス語だったり、中国語だったりします。彼らは、➋の欲求をどちらかというと中心に満たせる学校環境を選んだとしたら、英語ができると思ったとか英語を生かせないのかという周りの生徒のアンコンシャスバイアスのプレッシャーを感じます。

★ですから❶の望みをかなえられる学校を探します。湘南白百合は、B方式がありますから、彼らのような希望をかなえられる学校であります。そして同時に、❶も➋も満たしたいという希望もかなえられる学校です。

★B方式で入学した生徒も、実は心理的安全な雰囲気の中で、英語を学んでいくことができますから、最終的には➋の欲求も満たせます。

★こうして、湘南白百合は、世界のエスタブリッシュな教育と接続できる学校として認知されています。少子化の時代、2025年は、湘南白百合のように志望者数の競争ではなく、教育のクオリティの競争ということになるでしょう。

★定員を確保し、生徒1人ひとりの才能を生かせる多様な教育と高い大学合格実績の両方を満足する教育の質を選択する生徒が集まってくるのか、前者を満たす教育が主軸なのか、後者を満たす教育が主軸なのか。私事の自己決定ですが、世界のエスタブリッシュな教育と連続できるのは、両者を満たせる学校です。

★少子化の時代、各学校はどうするのか?2025年の中学入試の動向でそれを見ることができるでしょう。

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2024年12月 9日 (月)

八雲学園をカリフォルニアから考える(2)インターナショナル≦グローバル

★カリフォルニア州は、日本がすっぽり入る面積で、平地が多く、人口も4000万人弱。それでいて、経済規模はドイツや日本に迫る勢いです。米国に属しながら州というグローバル市民社会として相対的に独立しています。連邦制度に属しながらも州としての自治権がかなり強いわけです。これは、日本と東京の関係も同様なのですが、日本国民は市民社会的発想はあまりないかもしれません。あくまで日本≧東京というイメージが濃厚です。この点における法制度的あるいは権利関係的な事実はきちんと比較研究しなければなんともいえないのですが、イメージとしては、下のような図の集合関係になると思っています。

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★ですから、八雲学園の<破格な>グローバル教育の<破格な>の意味するところは、インターナショナルとしての国家に従属する海外の自治体というイメージでグローバル教育ではないのです。これは日本の各自治体の国際理解教育に相当するイメージなのです。

★しかし、八雲の場合は、インターナショナルとしての国家に属すると同時に、自治体として独自の自治権を有している市民社会においてグローバル教育を行ているという点において<破格>なのです。

★この違いが何を意味するのか、国際教育では、国において「主体的」な人間力は確立できますが、グローバル市民社会の1市民として、国を相対化し、自由に独立して国を超えてリーダーシップを発揮するマインドとスキルは育たないでしょう。

★国際理解教育においてのグローバルリーダーは、政府高官あるいは国の代理人として活躍する企業人などのように特別な権威と権限を有しなければならないのですが、グローバル市民社会におけるグローバルリーダーとは、そのような権威や権限を持つリーダーになることもできますが、その前に1人のグローバル市民社会のメンバーとして、判断して、意思決定して<考動>(思考と行動はDNAのようにらせん状に連結しています)できる独立した自由な人間力のことをいうのです。

★八雲の近藤理事長校長自身は、このような確固たるグローバルリーダーたる私学人です。ですから、東京都や政府とも正しい法と権利は共有しつつも、私学というグローバル市民社会に貢献する人間力が生まれる拠点として、私学の自治権や経営権は保守するのです。

★このような私学人の精神が、グローバル教育にも浸透しているのが、<破格>ということでしょう。

★受験生は中学入試直前を迎えています。受験生の未来がどのスタンドポイントに立って人生を送るのか、未来社会を描くとき、どこから描いていくのか、実は大事なことです。偏差値競争社会は、日本の国内社会でしか通用しない指標です。グローバル社会だって競争はありますが、自分はこの地球上において何ができるのか、そもそも何者なのか、独立した自由人としてのクオリティの競争社会です。偏差値という世界では認定されていない団体の創り出した指標に依存して生きているとどうなるかは、火を見るよりも明らかです。

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2024年12月 7日 (土)

八雲学園をカリフォルニアから考える(1)

★来年1月20日に第2次トランプ政権が誕生する前に、カリフォルニア州の雰囲気を視察したいと思い、昨日到着しました。久々です。20年前だったでしょうか、LAXで、八雲学園の近藤理事長校長とばったりお会いしたのは。相変わらずLAXでの入国審査のときのあふれるほどの人数に、やはり活気あるなあと感じ入りました。

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(カリフォルニアの海から夕刻日本を眺めた。。。)

★ハイウェイも相変わらず混んでいるし、スピードが日本とは違うのは前から変わりませんが、テスラのEVがたくさん走っていました。いきなり、テスラvsカリフォルニア州のせめぎ合いの話を想起しました。

★もちろん、街々は平和です。環境への配慮や大谷選手が好んでいるというハンバーグ店に立ち寄った時も、平和な対話があふれる店内でした。

★しかし、この日常は、東京にはちょっとないですよね。日本とほぼ同じ面積のカリフォルニア州の人口は4000万弱です。それでいて、経済規模は、GDPで、やがて日本やドイツを上回る勢いです。

★海岸から見る海の中には、何やら油田を掘っている施設が並んでいて、電力と自然環境を巡るカリフォルニア州のトランプ政権と対峙する準備が静かに進んでいるなあという雰囲気を感じないわけにはいきませんでした。

★いずれにしても、東京シティは国に、そして世界に大きな影響を与えます。カリフォルニア州もまた、合衆国に、そして世界にさらにもっと大きな影響を与えます。

★東京では、東京大学が先頭に立って、スタートアップを拡大しようとしています。カリフォルニア州では、それは当たり前だし、すでにGAFAMのような成功例もあります。そこにテスラが対抗して、カリフォルニアを離脱してテキサスにシフトし、いよいよトランプ政権でイーロン・マスクは何をするのか。

★美しいカリフォルニアの海、その向こうに日本があります。特に東京は、カリフォルニア州とどう共創共在していくのか。

★東京の私立学校の協会の会長でもある八雲の近藤理事長校長が、考えていることは計り知れないなあと思いつつ、カリフォルニアの教育視察というより、経済や生活の視察を今回は重視しようと思います。

★いずれにしても、八雲学園がこのようなカリフォルニア州を拠点にして(レジデンスという高級リゾートハウスまでつくって)研修を一年中行っています。一般の学校の研修旅行とは全く違うというのを実感しています。八雲の生徒は、たんに英語の勉強しにきているのではないという実感を抱いているカリフォルニア1日目です。

★なぜカリフォルニア州なのか。カリフォルニア州から、破格のグローバル教育とは何か、そのスーパーロールモデル八雲学園の重要な価値について思いを巡らしながらハイウェイを走ります。

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工学院(1) 田中教頭インタビュー第2弾 学習する希望の組織着々

工学院大学附属中学校高等学校のサイトに、教頭田中歩先生のインタビュー記事第2弾が掲載されています。同校の広報部がインタビューしたものです。外から見ていたらわからないような教育の上質のそしてそれがゆえに重要な部分が描かれいます。必見です。

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★中学に入学した生徒について、田中教頭はこう語っています。

「この8か月間は多くを学び、生徒との日々の関わりや新しい取り組みは、私にとっても深い成長の機会でした。
1年生の入学時に「10年後の自分」という課題で、10年後の自分と社会についてレポートと絵を提出してもらったんです。そこには、医師や科学者として社会に貢献したいという夢や、自分が成長して家族を支える姿などが描かれていて、濁りのない純粋な希望にあふれていました。」

★田中教頭の生徒中心主義の眼差しが明快にありますね。そして、常に教師も生徒と同様学習者であり、成長し続けるのだという学習者中心主義がその土台にあることも。そして、続けてこう語っています。

「生徒たちの描く将来のビジョンを尊重し、そのまままっすぐに夢が実現できるようにサポートしていきたい。生徒たちがデジタルネイティブであることは知識だけの経験不足を生む要因でもありますが、そこは我々がサポートすることで強みとして捉えていく、そんなモチベーションからのスタートでした。」

★ここで極めて重要なことは、田中歩先生が中学の教頭だということです。工学院は、校長室と高校職員室と中学職員室は別々にあります。したがって、中野校長と高校の奥津校長と中学の田中教頭はビジョンを日々共有し、刻刻とオンライン上のグループワークで軌道修正しながら、教育の実践計画を共有し、それぞれ高校、中学に浸透させているわけです。

★実際、中学の職員室の机の配置から言って、田中教頭は、フラット・フリー・フレンドシップという3F精神の雰囲気を作り出す役割を果たしています。だからこそ、生徒中心主義や学習者中心主義が完遂できるのです。

★多くの学校で、田中歩先生のような優秀な教員はいます。しかし、その優秀な教員と同じビジョンを学校が共有しているかどうかはわからないのです。むしろ、先生によってはそういう先生もいるし、そうでない先生もいるというのが、従来型の学校組織です。

★しかし、今の工学院は、ビジョンは学内で実践の隅々にまで浸透していく学習する希望の組織になっています。

★ですから、田中教頭のことばは、そのまま工学院の中学校のあり方そのものなのです。

★グローバル教育や探究、STEAM教育などどこの学校でも進み始めていますが、そもそもこのような学びを創り出したはじめのころ、今でもそうですが、MITのピーター・センゲの「学習する組織」や「学習する学校」という理論書に多くの先生方が学びました。MITメディアラボのシーモア・パパート教授たちにも学びました。 

★SDGsを標榜している学校は、無意識のうちに彼らの理論を学んでいます。もちろん、デザイン思考などもイギリスとスタンフォードの流れもありますが、今では、これらは現場ではフューージョンしています。それがゆえ、理論として言語化されることはだんだんなくなってきました。より実践研究になっています。しかし、実践研究は実践と理論を往還するので、工学院のように、学習者中心主義的であることは大事なのです。

★田中歩教頭は、10年前には、すでに心理学的なアプローチ(これは今でも中核です)で生徒中心主義的授業(PBL)を組み立てていたし、学習する組織とIBの学習者中心主義の考えをとりれていました。そして、ラウンドスクエアに加盟し、ケンブリッジイナターナショナルスクール認定校でもあるので、実践と理論の往還は当たり前になっています。

★しかし、当時は、それはまだ学内では、プロジェクトチームの先生方がまずは実験をやってみようという感じでした。多くの学校は、いまようやくこの段階です。ところが、田中先生が教務主任(他の学校の教務部長)になってから、プロジェクトレベルのものを学内全体に浸透させるアクションを起こしていました。

★とはいえ、あくまで教育の論理の話でした。しかし、教頭になった今、教育の論理と経営の倫理の両輪を回すリーダーシップを発揮する役割を果たすようになりました。

★教頭就任8カ月で、その浸透の速度が加速しています。学校全体が学習する希望の組織になる学校は、そうないのです。生徒中心主義は、生徒迎合主義だという派も学内にはいるのが普通の学校です(これを聞いて、あっ、ハラスメントの可能性があるというセンサーを保護者は持った方がよいのです)。教員というのは、ある意味、企業とは違い、専門家集団ですから、学習する組織になるのは難しいのです。この事実に受験生の保護者はそろそれ気づいた方がいいです。

★希望の学校、ウェルビーイングな学校は、組織で全体がフラット・フリー・フレンドシップの3F主義なんです。最近のキーワードでいえば、ハラスメントレスな学校なんです。教頭就任8カ月ですが、英語科主任、教務主任、教頭就任という10年かけて、小さく始めて大きく育てる忍耐強い田中歩先生なのです。

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